#3 つけ麺
今日は授業がない全休日。
そして、バイトがない日でもある。
僕はだらだらと、午前中を過ごしていると、すぐに十二時を迎えた。
台所に向かい、何を作ろうか冷蔵庫を見る。
――今日は、つけ麺にしよう。
そう思っていると、ドアベルが鳴る。
僕は玄関に向かい、ドアを開ける。
そこにいたのはーー。
横溝陽子だった。
「やっほ、秀一くん」
「お、おう。――どうしたの?」
「あ、お昼食べに来た」
「そうなんだ。あ、でも」
「良いよ。私、別段簡単な物でも良いし」
「そうなんだ」
僕はなぜか僕の家を知る陽子を怪訝そうに見ながらも、家の中に入れる。
「秀一くんって、一人暮らしなの?」
「そうだよ」
「へー」
――何なんだ、彼女。何の為に入ってきたんだ・・・・・・?
僕は彼女のことを疑問にしつつ、台所へ戻って昼食の準備をする。
簡単な物ね。
ま、同じつけ麺で良いよね。
僕はコンビニで買ったつけ麺の袋を開け、そこから二パック取り出す。
二つ鍋を用意し、そこに水を入れる。
火に掛け、先程の袋に書かれていた作り方と同様に作る。
そして、つけ麺が出来上がる。
「お待たせ」
「わ~、つけ麺だ~」
陽子は笑顔で言う。
「と言っても、コンビニで買ったつけ麺なんだけどね」
「良いよ、それは別に。コンビニのやつでも美味しかったら何でもいいじゃん。――ところで、お湯ってどこにある?」
「あ、台所にポットがあるから、それを使って。――じゃ、食べよう」
僕らは箸を持って、両手を合わせる。
――いただきます。
二人の声が合わさる。
僕は麺を箸で取り、つけ汁に浸す。
そして、啜る。
――美味い。
何回も食べたこともあるが、やっぱり美味しい。
暫しの間、僕は無心になって食べていた。
箸で麺を取ろうとするが、器には何も無かった。
――あ、つい無心になって食べてしまった。
まあいい。それが僕、なのだから。
さて、この後はどうしよう。
僕はつけ汁に目線を移す。
――よし。
僕はつけ汁の入った容器を手に持ち、どこかに持って行く。
そして、その器に何かを入れる。
――そう。お湯だ。
僕は白く湯気が立つ器を見ながら、元の位置に戻る。
――あちち。
だけど、これが良い。
僕は又もや無心になり、あっという間に飲み干してしまった。
――さて、肝心なる陽子はどうだろう。
ふと目線を変えると、彼女は普通に食べていた。
ふっ。
彼女はどうやら、友人が食べたものにはアレンジを加えないらしい。
そう思っていると、彼女は何かを食べていた。
――あ、あれは!
どこから持ってきたんだ!
彼女が食べていたもの、それはチャーシューだった。
彼女が美味しそうに頬張っているのを見ながら、さっき彼女が言った言葉を脳内に反芻する。
――お湯って、どこにある?
そういうことだったのか・・・・・・!
僕は一本取られた、という気持ちになって彼女、陽子を見る。
「ごちそうさまでした」
――また今日も、彼女に負けた。
おいしい学食 青冬夏 @lgm_manalar_writer
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