第24話 本当の戦いはこれからだエンド

 葬式から一ヶ月。

 今日は怪物域と人間域の壁警護である。

 ウンゲテュームが壁に近づいて来たら殺すのが主な役目である。

 だけど奴らもそこまでバカじゃないので、あまり来ない。

 今回重要なのは空である。


 外国から現れる人間達の警戒だ。

 特にこちらに危害を加える事はないのだろうが、ウンゲテュームに食われるのを防ぐ為に侵入したら敵判定になる。

 既に一機侵入して撃ち落とされている。

 人は生きているようで、現状使われる機会がないと思われていた洗脳系の兵器が尋問している。


 それで本当の狙いなどが分かれば良いのだが、言語の問題があるので辛いモノだ。

 龍虎も完璧な訳では無いので、翻訳には辰触らない。

 結衣は自分の特異体質の視力を活かしてウンゲテュームを探していた。

 彼女が見える範囲なら倒す判定だ。


 小型程度なら結衣一人でも倒せる。

 あくまで遠距離ならばの話だけど。

 龍虎の方は動きながら警戒している。

 真面目に仕事をしている二人を見ながら私は紅茶を飲み、資料に目を落としていた。


「下級兵器が本戦に参加するとはね」


 正確には結衣の力と私の力が必要なのだ。

 主との戦いは私の力が確実に必要となる。

 正確には私と超級の一人のペアなのだが。その人と私はとても相性が良いのだ。

 そして結衣はコアの回収だ。


 彼女のエネルギー量は誰もが感嘆する。

 そのエネルギーを使った専用の兵器を開発したらしいのだ。

 なんでもコアを無傷で回収しながら、主の再生を妨害するらしい。

 だけど、それを発動するには馬鹿げたエネルギーが必要となる。


 しかも、それをチャージして放つ必要がある。

 元々溜めておいて放つ事は出来ないらしい。

 なので、敵の前で数分間のエネルギーチャージが必要なのだ。

 結衣をそんな危険な場所には行かせたくなかった。

 結衣だけじゃない。龍虎もだ。


 確かに最初の時と比べたら二人とも凄い成長を遂げているのは間違いない。

 龍虎は人が戦っている姿を見ていると、それを自分の技術に変える。

 視力だけではなく空間的な感覚も使えるようになった。

 彼女の力は中級の上位レベルには上達した。


 エネルギー操作をひたすら練習させた結衣は単発火力だけ見たら超級レベルだ。

 だから今回の京都奪還作戦でのキーパーソンとなっている。

 下級の役目は本部隊が主へと向かう道の雑魚処理だ。


 だが、今回私達下級一番隊はそこから脱線して本戦に向かう。

 そこで主のコアを回収する必要がある。

 それがどれだけ難しいかと聞かれたらなんとも言えないのは確かだ。

 もしかしたら、今回の戦いで全滅するかもしれないし。


 その時、メタルカラーの鳥が私の肩に止まる。

 背後を見れば奏美がゆっくりと歩いて来ていた。


「同等とサボりですか」


「作戦資料のチェックですぅ。サボりではありません〜」


「任された仕事をしないで言い訳を作って目を背けるのはサボりじゃないんですか?」


「だってさぁ。この足だぜ? あんまり動きたくないよ」


 肉が腐れ落ちて骨が露出している足を奏美に見せる。

 最近私はみんなと一緒に風呂に入ってない。

 この骨が見える生脚を見せたくないからだ。


「奏美はそんな姉さんも好きですよ」


「そりゃあどうも」


「流された」


 最近は確かに機械の力で無駄なエネルギーを使わずに済んでいる。

 だけど、それでも普段の生活だけでも消費しているらしく、遂に体全身にエネルギーが回らなくなった。

 それによって足の肉が腐れ落ちた。

 骨があるので一応歩く事は出来るけど、痛みを感じる。


「作戦中に死ぬのかな、私」


「奏美はそれを許しません。絶対に守ってみせます」


「期待しておりますよ」


 さて、そろそろ仕事している風を装わないと龍虎にグチグチ言われそうなので仕事する事にする。

 特に外国から来る事もなさそうなのでのんびり観察する事にする。

 結衣の方を見れば、弾丸を放ってそれを遠隔で操っているところだった。


「お、結衣遠隔で弾操作出来るようになったのか?」


「は、はい。その。菊さんに教わったんです」


 超級達も下級一番隊を良く世話をしている。

 理由は単純、死なせない為だ。

 最前線で戦う事になる龍虎と結衣は死ぬ可能性が高い。

 そして、結衣だけは死守しないといけない。

 まだ二人にこの作戦は伝えられてない。


 超級に教えて貰えている現状により、他の下級達からは冷ややかな目と言うか、敵意の籠った目を向けれてた。

 そんな現状を私はボロボロな体で見守っている。


「二日後だ。二日後」


 それが京都奪還作戦の開始日である。


 そして翌日。

 今日は下級一番隊が秘密裏に司令官室に呼び出されている。

 中に入ると超級の数人と司令官、奏美が揃っていた。

 二人が緊張しているのが伝わる。


 そして奏美の口から今回の作戦が伝えられた。

 当然驚くのは結衣である。


「わ、私が⋯⋯出来るでしょうか。こんな私が」


 私と龍虎が互いに手を肩に置く。

 結衣が順番に顔を向ける。


「大丈夫だ結衣。君を信じる私を信じろ」


「同じだ。それにアタシ達は厳しい教官達にしごかれただろ? だから大丈夫だって。頑張ろ。アタシは命を掛けてでも結衣を守る!」


「龍虎ちゃん」


 そして、作戦の流れを聞きながらその訓練を周囲の雑魚ウンゲテュームを使って行った。

 超級との合同実践式訓練に二人は終始緊張していたが、時間と共に緩和された。


「龍虎ちゃんそっち行ったよ!」


「おっけー!」


 龍虎の方に向かって行ったウンゲテュームを彼女は回し蹴りで破壊した。

 エネルギーを足に集中させる事によって一撃の威力を上げたようだ。

 その後も囲まれたりしたが、動体視力だけに頼っていた龍虎とは違う。

 数と場所を把握して、無駄の無い動きで避けて囲まれた場所から脱出した。


「ハイパーショット!」


 結衣が極太のレーザーを放ってその全てを消滅させた。


「中々に良い連携ですね」


「ああ。そうだな」


 奏美の言葉に私は賛成した。

 それから夜遅くになるまで行い、親睦を深める為に今日の訓練に参加した兵器達で飯を囲った。

 当然、超級全てと上級の上位層の中に下級がいるので色々と噂は立った。

 だけど、この事は知らされる事は無い。


 もしも知られたら『自分も』と名乗りを上げる人がいるからだ。

 それは邪魔になるだけ。

 超級と上級は主。中級は大型。下級は中型と小型を相手する。

 主と戦うまでにあまり消耗させないために、先行するのは中級だ。


「頑張ろう。皆。ただ、死ぬな!」


 司令官がそう酒を掲げた。


 翌日、京都奪還作戦が発令された。

 他の基地からも応援が来てくれたが、私の知人はいなかった。

 既に行っていた編成に分かれ、私達は手前側の小型へと先行する。

 数十分の戦闘をしているフリをして、超級達が進むのに合わせて空先輩に回収して貰う。


 そこで結衣は専用の機械を取り付ける。


「加速する」


「さぁ二人共、その名を栄光の歴史に刻みに行くぞ!」

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化け物と戦う兵器の中で最弱兵器と呼ばれている私は最強ですよ? ネリムZ @NerimuZ

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