第13話

「そもそも私のお庭に勝手にあんなものを作ることが不愉快だわ」


 大妖精様は、あまりに強力な結界が自分の土地に存在していること自体が嫌であるらしい。


「申し訳ありません。しかしあれは、未知の人物が勝手に・・・」


「その話はもう聞き飽きたわ!まったく、その怪物とやらの顔をぜひ見てみたいものだわ」


 ミョルニルのことは説明したのだ。それなのに彼女は俺たちに非があるみたいに賠償を求めてくる。理不尽である。


「いいかしら?来月までにはここに生贄を準備して「食事会」を開催するのです。それができなければ・・・あそこ、隣の町の、なんて言ったっけ・・・・・」


「シュリーブルクでしょうか」


「そう、その街を焼き払いますから。心しておきなさい」


 いや、さらっとメッチャゃえぐいこと言ってない?


「わ、わかりました。間違いなく来月のこの日までに準備をしてまいります」


 うわぁ、国王に報告しないと。頭が痛い。


 我々が大妖精様にへりくだる理由が露骨に出てきた形だ。本人も強いし、彼女は各地にいる小さい妖精を集めて、遠隔地でも戦闘能力を使うことができるため、我々からしたら全く敵わないのだ。今回のように脅されたらどうしようもない。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「フランクさん!お水持ってきましたよ!」


 私が部屋に入ると、フランクはベッドに座って待っていた。


 私は持ってきた水瓶からコップに水を注ぎ、そのコップを手渡した。


「ありがとう」


 フランクはげっそりと疲れた様子で、水を口に含む。


 それからコップをベッド脇のテーブルに置いて一呼吸置くと、改まった表情でまっすぐこちらのほうをみた。


「・・・・・これは君の厚意を踏みにじるような質問になってしまうのだが・・・君はなぜ俺にこんなにも親切にするんだい?あの時、俺は君を殺すことも考えていたんだ・・・そういう人間なんだぞ」

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怪物と一緒 キャビアうどん @zundamochi64

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