【短篇】異世界転移 ~お花畑は皆殺し~

かんら・から

【短篇】異世界転移 ~お花畑は皆殺し~

『いやー、中々に面白い死に方だったねぇ』


 ん? ドコだここは?


『あれ、寝ぼけてるの? それとも死んじゃったショックかな? 自分が誰だか分かるかい?』


 えーと、確か左側良介さがわりょうすけのハズだよなぁ。 てか僕は死んだのか?


『じゃあ年齢は?』


 17歳の高校2年生だ。


『OK、OK。 簡単に説明するとだね、路地裏で少年が私刑リンチに合っていた場面に遭遇した君は、バズりたくて持っていたスマホで撮影していた』


 あっ、そうだ。 そしたらボコっていた連中に見つかって…。


『そう、打ち所が悪かったんだろうね。 そして今の君の体は、雑木林の肥料になるべく、絶賛埋葬中だ。 やったね、自然保護だ☆』


 いやいやいや、ちょっと待ってよ。 どうして撮影していただけなのに殺されなきゃならないんだよ。


『そうだね。 撮影なんてしないで警察に連絡していたら、君も死なずに澄んだかもね』


 なあ、アンタ神様なんだろ? こんなの間違ってるよ! あいつらこそ何とかすべきじゃないのか?


『うーむ、残念だけど、僕は地球人の神様でもなければ、裁く権利も持ち合わせていないよ』


 そんなの理不尽だろ!


『そんな君に朗報だ。 このまま死ぬのが嫌なら、スキルを与えて異世界に転移させてあげるよ? 剣と魔法の世界だ』


 スキル? それってチート転生ってヤツか?


『チートは無理かなぁ…。 ああ、それと転生じゃなくて転移だからね。 今回のは死んだ事を無かった事にする方法だから』


 怪我はしたままで?


『それくらいは修復するよ。 気になるなら、回復系のスキルでも取得してみたらどうだい?』


 いや、回復系のスキルだけ貰っても、何だか詰みそうな気がするし。


『お勧めは鑑定スキルだよ。 後は2つ程、好きなのを選ばせてあげるね。 どうだい、転移してみないかい?』


 どうして僕なんだ? 言っちゃぁ何だけど、カーストは真ん中くらいだったと思うよ。


『いやぁ、僕が作った世界なんだけど、ちょっと難易度設定を間違えちゃってね。 人類の減少が少し、見過ごせないレベルなんだ』


 えっ? 何それ。 てか何をやっちゃったの?


『うーむ、良かれてと思ったんだけどね。 倒した相手の魂を吸収して、レベルアップとスキルの取得が出来るようにしたんだよ』


 ん? それの何処に問題が?


『いやー、まさか魔物同士が殺し合うとは思わなくってさ。 一部の魔物が凶悪化してしまったんだ』


 レベルアップは、人類の特権にしておけよ!


『人間にしか使えない、剣術スキルとか色々あるからね。 何とかなると思ったんだよ』


 適当過ぎるだろ。 もうちょっと人類を優遇しろよ。


『だから君のような人間に、スキルを与えて送り込んで、人口の減少を抑え込もうとしているんだよ』


 いやでも転移直後で死にたくないし。


『今なら剣術スキルのLv7、達人レベルも含めちゃう』


 それで魔物に勝てるのか?


『Lv5もあれば、一般的な魔物なら苦労しないよ。 もちろん剣は必要だけどね』


 剣も貰えるのか?


『鉄の剣程度ならプレゼントしちゃうよ。 これで君もモテモテだぁ、やったね☆』


 じゃあ、現地で使える、金もくれよ。


『お金は無理かなぁ。 水と食料くらいなら何とか』


 あっ、そうだ。 冒険者ギルドってあるの? あるんならアイテムボックスが欲しいんだけど。


『あるよ。 じゃあ最後のスキルはアイテムボックスだね。 荷物はアイテムボックスの中に入れておくから、現地で確認してね』


 ちょっ、まだ話が!


『君がハーレムを作って、人類を増やす事を期待してるよ。 じゃ修復&転移!』



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 まったく、追い払うかのように転移させられちゃったなぁ。


 周囲は草原といった場所で、差し迫った危険は無さそうだ。


 よし、早速鑑定スキルで自分を見てみるかな。


「鑑定」


 ------------------------------

 名前 : 左側良介

 種族 : 人族

 Lv : 1

 HP : 50

 MP : 50

 攻撃 : 10

 防御 : 10

 魔攻 : 5

 魔防 : 5

 スキル :

  鑑定Lv1、剣術Lv7、アイテムボックスLv1

 称号 : なし

 ------------------------------


 おおぅ、見事に初期ステータスだ。 器用とかの項目が無いんだな。 鑑定レベルの問題だろうか?


 てか、攻撃力が低くないか? 剣の達人なんだろ? それとも装備しないと上昇しないのか?


「アイテムボックス」


 ------------------------------

 収納物 :

 鉄の片手剣、水袋、堅パン、干し肉

 ------------------------------


「鉄の剣」


 おおぅ、意外とシッカリとした片手剣だぞ。 しかも新品だし。


 あっ、そうだ。


「鑑定」


 ------------------------------

 名前 : 左側良介

 種族 : 人族

 Lv : 1

 HP : 50

 MP : 50

 攻撃 : 10 + 100

 防御 : 10

 魔攻 : 5

 魔防 : 5

 スキル :

  鑑定Lv1、剣術Lv7、アイテムボックスLv1

 称号 : なし

 ------------------------------


 すげぇ、これなら僕程度の人間なら、一撃じゃないのか?


 ゴブリンとかの強さは分からないケド、何だか無双出来そうな気がするよ。


「きゃぁっ!」

「大丈夫、メグ?」

「そんな事より援護しなさいよ!」

「わかったわよ、うっさいわねー」


 ん? ピンチな声がする。 コレって、出会いイベントなのか? どっちだ? あっちかな?


 まあ良いや、僕の無双伝説の始まりだぜっ!


 おおぅ、女の子2人が3匹のゴブリンに襲われているぞ。 これで助けたりなんかしたら、ハーレムルート突入か?


「せいっ!」


 僕の一撃で、一刀両断されるゴブリン。 見惚みとれても良いんだよ。 何故なら、ここからはずっと、僕のターンだからね。


「次、せいやっ!」


 またしても倒れ伏すゴブリン。 ふっ、驚いているようだね。 こう見えても剣の腕は一流なんだ。 ゴブリン程度には苦戦すらしないのさ。


「ラストっ!」


 最後のゴブリンも、抵抗すら許されずに崩れ落ちる。 さぁ、ここからが大切だぞ。 さわやかで嫌味っぽくなく、紳士な態度で言葉をかける。


「君達、怪我はないかい?」

「えっ、あっ、剣術Lv7? 凄く強いんですね。 怪我はないです」

「ちょっ、私もいるんですけど?」


 おおぅ、掴みはOKっぽいぞ。 それに2人ともメッチャ可愛いじゃん。


「君も怪我は無いかい? 良かったら送っていくよ」

「あっ、ありがとうございます。 大丈夫です。 私はメグっていいます」

「私はミーナ、よろしくね♡」


 うっほーっ、イキナリ好感触? あせるな、僕。 以前とは違うんだ。 僕はこの世界では、剣の達人。 選ばれた人間なんだ。


「ああ、よろしくね。 それでどこまで送って行けば良いのかな?」

「その前に、汚れちゃったから、水浴びをしたいの。 守ってくれる?」

「勿論構わないよ。 それくらいお安い御用さ」


 僕は2人に連れられて、川へと向かう。 もしかしてエロイベントに突入か? 焦るな僕、こんなシチュエーションなら18禁のゲームにもあったじゃないか。


 おっと、そう言えば鑑定スキルって、人物にも通用するんだよな。 ちょっと気が引けるけど、見させてもらうよ。


 ------------------------------

 名前 : メグ

 種族 : 人族

 Lv : 3

 HP : 70

 MP : 50

 攻撃 : 12 + 30

 防御 : 10

 魔攻 : 3

 魔防 : 3

 スキル :

  鑑定Lv1、短剣術Lv2、料理Lv3

 称号 : なし

 ------------------------------

 名前 : ミーナ

 種族 : 人族

 Lv : 3

 HP : 75

 MP : 50

 攻撃 : 12 + 35

 防御 : 13

 魔攻 : 2

 魔防 : 2

 スキル :

  短剣術Lv3、解体Lv2、索敵Lv3

 称号 : なし

 ------------------------------


 へーっ、思ったよりも強いな。 これなら僕の助けが無くっても切り抜けられたんじゃないかな。 まあ、結果論だけど。


 いや、清楚系のメグには難しいのかな? 強さは申し分無いケド、ツンする気弱ってカンジだし。


 ミーナは…、うん、普通の元気っ娘ってカンジだな。


「ん? どうかしたの?」

「いや、何でもないよ。 それよりも川ってどこにあるのかな? 僕はここの地理には詳しくないんだ」

「もうすぐよ、あの丘を越えた辺りなの。 そっかぁ、詳しくないんだぁ」

「うん、旅をしている最中なんだ」

「それにしては、荷物も持ち合わせていないみたいだけど?」

「アイテムボックスだよ。 秘密にしてね」

「ええ、良く判ったわ」


 そんな会話を楽しみながら、僕達は川辺に辿り着く。 へえっ、この世界の川ってこんなに綺麗なんだ。


「ねぇ、その、私達が水浴びをしている間は、後ろを向いててくれない? 恥ずかしいから」

「メグ、それは少年の生殺しなんじゃないかな」

「ちょっ、私にはハードルが高いっていうか、何て言うか」

「おっとめー、ひゅーひゅー」

「からかわないでよ!」


「僕は構わないよ。 後ろを向いているね」


 なんて、恰好をつけてはみたけれど、結構きついぞ。 音を聞くだけで、興奮するんだけど!


「ねぇ」

「ん? どうしたの?」

「その…お礼とか…その…一緒に…水浴びとか…。 あっ、でも一緒に水浴びするだけだからね。 いいって言うまで、コッチを向いたらダメなんだからね!」

「うん、判った」

「その…服を着たままでは、水浴びは出来ないと思うの!」

「うん、ああ、そうだね」


 静まれ、静まれ僕のエクスカリバー! ドン引きされたら、初体験が遠のいてしまうじゃないかっ!


 慌てず自然なカンジで服を脱いで、何でもない雰囲気で佇んでいれば良いんだよ!


 ってアレ? 足音が近付いてくる? もしかしてココで僕達は結ばれるのか?


 がっ!????? えっ、何が起こった? あれ? 足に力が入らないぞ。


「けっ、気持ち悪りーんだよ! イカ臭い童貞ヤローがっ!」

「うはーっ、ウケるー、ちょうウケるー。 身ぐるみをぐのが面倒だからって、言葉たくみに脱がせるとか。 童貞ホイホイ極まれりってか」

「いいだろ別に。 それにコイツってばアイテムボックスまで持ってやがるんだぜ。 全部取りに決まってんじゃん」

「身ぐるみだけじゃなくって、スキルまでも狙うとか。 鬼だー、鬼がいるー。 鑑定偽装の鬼がいるー」

「いや、ミーナが欲しがっていた鑑定スキルと剣術Lv7だぜ。 取りあえずチャンスがあれば、殺るだろ、普通」

「えっ、ウソ、マジ? トドメは私に譲ってくれない?」

「元よりそのつもりだ。 その代わり死体を川へ流すのも手伝えよ」

「メグってばサイコー。 愛してるぜ、相棒」

「よせやい、照れるじゃねえか」


 えっ? 鑑定偽装? 鑑定偽装スキルの事か? それに何だか熱いような? いや、寒いのか?


 あっ、何だか、ザクッ、ザクッって音が、僕の体から…。



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