とにかく読んでほしい。
伝説的アイドル「ハルコ・ミヤカワ」の死から始まるこの物語は
いくつもの対談という形式でつづられている。
その中でいくつものハルコ・ミヤカワの一面が示されていく。
まずこれが面白い。常にこちらの予想を上回り、退屈させない。
一つ読めばすぐ次が気になってくる。
そしてそうして広がる個々の逸話たちは
物語の終盤に一気に強烈な哲学の下に結集し読者の前に示される。
この話のまとめ方は実に見事だと思う。
この物語は生と死、現実と虚構がDNAの螺旋のように絡み合っている。
二つのことなる価値観の衝突が絶えず繰り返され読者を揺り動かす。
この衝突こそ、この物語が放つ魅力的な輝きなのではないだろうか。
それらの哲学を整合し、物語として編み上げる
作者の知識の深さと技の巧みは美しい。
なんだか難しい話なのか、と思われるかもしれない。
確かに哲学や洋楽に通じていればこの話をもっと深く楽しめるだろう。
そういう要素が随所に散りばめられている。
だが、そういうのに通じていない読者を楽しませてくれる懐の深さがこの作品にはある。
安心して読んでほしい。