第4話 忘れないよ


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シマウマは、ぼうぜんと、立ち尽くしていました。


まさか、カミナリが目の前に落ちるなんて。

それもよりによってカバの上に。


あんなすさまじいカミナリを受けたら、

ひとたまりもありません。


人間の乗り物にまたがったまま、黒こげになって地面に倒れたカバの姿を見ると、

シマウマは、背中がかゆくてたまらなくなってきます。

カバは、まだかすかな息をして、体をふるわせているのです。


『いま、カバさんはきっと、夢の中で、

この人間の機械にまたがって、サバンナを走ってるんだね。』


ふと、後ろから、カバの肉の焼けたにおいをかぎつけた動物の気配がします。



『やってきたな、きっとライオンのヤツさ。

今度は、僕がブルルンルン!する番だ。』


『あんなにあこがれていたカバさんのブルルンルン!忘れないよ』


シマウマは、くるりときびすを返すと、動物の気配がする方へを駆けだしました。

まるで、自分に気を引き付けるかのようです。


そして、そのそばを全力で、通り抜けました。

思った通り、気の荒いライオン3頭が追ってきます。



かっぱらかっぱらかぱかぱかっぱら。


シマウマは、走りながら、思いっきり口から息を吸い込んで、

口をふくらましました。


そして、いっきに吐き出しました。


『ブルルンルン!』



〈完〉

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カバさんのブルルンルン! 夢ノ命 @yumenoto

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