第三話 入学式II
アレスト王国立学園の入学式が始まった。
入学式は各国のお偉いさんが来賓として来ていることもあり盛大に行われ、退屈に感じるはずの前半の入学式はあっという間にすぎ、後半になった。
「ありがとうございました。次に、生徒会長からの挨拶です。生徒会長よろしくお願いします」
「はい」と言う声が聞こえてきて、ざわついてた声が一瞬で静まった。
(さすがはこの学園最強の実力を持つ生徒のトップだ)
ステラも正面を向いたが、驚きのあまり一度下を向いた。
それはステラの家であるエレファン侯爵家の敵対派閥、オルトフォート公爵家の長女ジュリカ・フォメス・ザ・オルトフォートだったのだ。
「はじめまして。私はアレスト王国立学園の生徒会長、ジュリカ・フォメス・ザ・オルトフォートです。まずは新入生の皆さん入学おめでとう。在校生一同、君たちを歓迎します。ようこそ王国立学園へ。あなたたちは、これから4年間一緒に過ごしていく仲間です。階級と言う壁がないこの学園で、充実した毎日を送ってください」
一斉に拍手が起こった。
しかし、ある発言で新入生の手が止まった。
「この中に、自分の正体を隠し嘘をついている生徒がいると聞いた。素直に名乗り出てもらおうか」
柔らかい声から、今では生徒誰もが恐れる声に変わった。
これが彼女の本当の素顔。ステラは背筋が凍った。
「どうした、新入生…… 素直に自分だと認めたらどうだ」
(気のせいか…… 一瞬僕のことを見たと思ったのだが……)
ステラは正体が生徒会長にばれているのではと思い、恐る恐る手を挙げようとした。その時……
「私です」
新入生全員が一斉に注目した先は、同じクラスの女子生徒が手を挙げたのだ。
それもステラの隣の席に座っていた生徒だった。
(……)
ステラもほかの生徒と同じようにその場で息をのんだ。
「お前が、正体を隠し嘘をついて入学してきたのか?」
「えぇ」
「いい度胸しているなお前。まあいい…… その度胸に免じてここでは何も言わないが、後で生徒会長室に来い。いいな」
「えぇ、わかりましたわ」
あまり関わらない方がいいと、ステラは思ってしまった。
その後、先程の出来事はなかったかのようにスムーズに入学式が終わった。
入学式終了後 第一中庭
「疲れた~」
ステラは中庭のベンチに座る。
(入学式はあっという間に終わった…… 終わったのはいいが、あの子は大丈夫なのだろうか……)
さっきまでは関わらない方がいいと思っていたが、やはり気になってしまうステラだった。
(確かあの子も同じクラスだったよな。話しかけてみるか)
ステラは決心し、その場から離れた。
それから数分後……
ステラは教室に入って彼女を探したが見つからない。
(まさか、生徒会長室に行ったのでは……)
ステラは急いで生徒会長室の方へと向かったが、向かっている途中の廊下で彼女を見つけた。
「何?」
彼女は険しい表情でこちらを見ていた。
一方、ステラははじめて家族以外の女性に話すので物凄く緊張していたため、なかなか言葉が出なかった。
「えーと~ 何を話すんだっけ」
「用がないならあっちに行ってくれるかしら」
緊張で頭が真っ白になる。
ステラは一度深呼吸した。
「そうだ。君、名前は?」
とりあえず、名前を聞いてみる。
「アメリアよ」
「アメリアさんか。僕はステラ、よろしく」
何とか会話は出来るみたいとステラは安心した。
「それで、何のよう?」
「さっきのことで」
「あぁ…… 入学式のことか…… 気にしないで。私は大丈夫よ」
大丈夫と言っている彼女だが、足が震えていた。
(こんな時なんて言ったらいいのかわからないな)
唐突に思いついたことを言ってみる。
「もし良ければ、アメリアさんの力になってもいいかな」
「え……」
ステラが口にした言葉に、アメリアの表情は変わった。
「あの生徒会長は強い。アメリアさん一人だけではあの生徒会長に勝てないかもしれない。それに、君はとにかく頼れる仲間が必要だと思っているんだ」
「……」
「いやかな?」
「嫌じゃない…… むしろ嬉しいかな。ありがとうステラ」
アメリアは顔を手で隠していたためか表情は分からなかったが、ステラは少しうれしかった。
「よかったよ。では改めて、よろしく」
「こちらこそ、よろしくね。ステラ」
二人は握手を交わした。
握手したまま、数十秒間その場に固まった。
「「……」」
周りが静かだったためか、急に恥ずかしくなってきたステラとアメリアだった。
アメリアは立ち上がり、先に生徒会長室に向かった。ステラも後を追いかけていった。
帝国英雄戦記 神無月レイ @kannazuk68
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。帝国英雄戦記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます