「運命」

 今日もこの時間がやってきた。

 アイツはオレの口を開けると、あの忌々しいヤツを無理矢理押し込んでくる。

 不快な匂いが鼻をつく。

 こいつは拷問だった。

 そして、俺の運命だった。

 決して逃れることのできない、人生の呪縛。

 運命に抗おうと抵抗してみせるが、アイツは俺の抵抗を嘲笑うかのように、薬を取り出した。

 白い薬だ。

 くそう。

 オレは甘美な誘惑に負けじと歯を食いしばった。

 しかし、アイツは白い薬をオレの口へと注ぐ。

 オレの全身に電撃が走り抜けた。抵抗できない。これがヤツの罠だと分かっていても、その誘惑に打ち勝つことができなかった。

 今日も、オレは負けてしまった。惨敗だった。

 オレは、自分の運命を享受せざるを得ない。

 オレは悔しさのあまり、流れる涙を止めることができなかった。



「ロンよりショウコ」


ロン「どうしたんだい」


ショウコ「最近、洗濯機の調子が悪くて…液体じゃなくって粉の洗剤を入れると、ちょっと調子が良くなったりするんですけど」


ロン「中古の洗濯機だからなぁ」


ショウコ「最近水漏れまで起こるようになったんですよ」


ロン「それは修理すれば大丈夫だよ」


ショウコ「そうなんですけどね」


ロン「何であれ、物は長く使い続けていると魂が宿るって言われているからね。もしかしたら、機嫌が悪いだけかもしれないよ」


ショウコ「そうなのかな。‥それじゃぁ、頑張ってくださいね洗濯機さん。今度からいい洗剤使いますからね」


ロン「…気のせいかな。なんか濯ぎの回転が良くなったような…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

本当に困った時に鶴は恩返しをしてくれない! 須賀和弥 @vision_com

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ