戦中八話「さいごの夏の少年少女たち・・・とオッサン」あとがきと解説
あらかじめことわっておくと、戦中八話というのは女皇戦争の裏面で発生していたあるいは本編には記せないしょーもない話を坂本龍馬が編み出したとか言われる「船中八策」になぞらえて全部で8話の予定で挿入される番外編です。
予定なんだけど、どうなることやら・・・。
そもそも「さいごの夏」に関しては全部で二万文字限度の小編となる予定だったのに結局5話分の内容になっちまったという番外編というか、トゥドゥールとの極秘会見のあとライザーさんが絶対防衛戦線に合流する間にエドナ杯があった筈じゃんという失念から生まれた物語です。
そもそも当初はオリンピックと同様にして4年ごと開催の予定がどうも計算が合わなくて5年ごと開催になったとかいうトホホな内容であり、更にビルビットとシモンが決勝を戦った前々回大会、アリオンとディーン(ほんとはルイス)が決勝を戦った前回大会に続く大会がどんなだったかの結果報告をライザーさんがお土産として剣皇ディーンに持ち込む内容でした。
ちなみにシモンが最年少優勝なのはエドナ杯に思うところが大きかった誰かさんが逆算しての子作りを図った結果です。
ほんでもって後に従兄弟なのに夫婦になるリシャールとエレナ、「アタシだけのキモデブオヤジ先生でダーリンという太っちょフィン」(リリアン談)が出てきて終わる筈だったのに、ヴァスイムが乱入して荒れる。
ついでに《電光石火》の剣皇騎士ケイロニウスまで出てくるわ、コナン・エリオネア少佐が《アイラスの悲劇》の真相まで語ってしまう。
奇跡が起きたというのは絶対的な敵だと思われていたルーシアの傭兵騎士団エルミタージュの本国傭兵騎士ヴァスイムがエウロペア聖騎士に、父の敵討ちをどこかで考えていたケイロニウスが剣皇騎士団において団長のディーン、カールと副団長の《鉄舟》に続く初の剣聖になっちゃいましたという話です。
しかしグレードアップしただけのことはあって内容は前回大会のトホホな内訳と裏準決勝とかいうルイスの暴挙とディーンの童貞喪失劇(やれやれ)に始まり、「東方戦争」の主役たちの顔見せと最終決戦でフィンが使う《アイギスの聖なる盾》の話になりましたが、肝心なところで話が終わっていて、ヴァスイムvsコナンは実現しない。
そして、キエーフ防衛戦の語られざる真相とルーシア成立史。
またエドナ杯の名の由来である光の剣聖エドナ・ラルシュと過去編におけるエドナ・ラルシュことビルビット・ミラー少佐ことベルベット・ラルシュの真実。
ちなみにどうでもいいことなのですが、ビルビット・ミラー少佐のモデルは「こち亀」の中川圭一さんです。
中川さんは金髪イケメンですが、ビルビットは銀髪イケメン。
ちょっとそれを臭わせているのが両さんに中川くんが言ってるようにトリエル副司令を「先輩」と呼んでいることだったり、エドナや《銀髪の悪鬼》とか呼ばれている割に自己評価が低いわ、いざというときに大人げないわ、イケメンで大金持ちなのに紅一点でヒロインの秋本・カトリーヌ・麗子さんとくっつかなかったりとかいうなんかもうじれったい人だなという印象そんまんま。
なんでじれったく優柔不断だったり美人姉妹で破壊王シスターズだという設定でナダルくんのトラウマとなったアルセニア、ティリンスのどちらか選ばなかったりしているかは最後で明らかになる通り、ベルベット・ラルシュという本名ですら堂々と名乗れない事情やらベルベット=エドナではないという事情だったり、こころはアルセニアを選んでいるのにティリンスの強さが必要なのかもとか思っている事だったりにしました。
そもそも光の剣聖エドナの前半生である闇の剣聖マガールはネームドというよりエクセイル家が勝手にねつ造した伝説であり、エドナは過去に龍皇だったこともあるエウロペアネームレスの元リーダー。
アルフレッドに完敗したエドナに従って帰化したネームレスの数はとても多かった程、人望とカリスマ性を持っていました。
それが実は・・・という話でもあります。
種の将来を儚んで「龍虫大戦」を引き起こした。
その際に知らなかったが故に大きな罪を犯してしまった。
ボルニアの地で初代剣皇騎士団長ファーンの協力でミロア法皇国を建国し、道筋が立つとセスタに隠棲することになった。
しかし、エドナはその死に際して魂に刻まれた技だけを継承し、ネームレスの種の記憶とも呼べる自身の知る過去の記憶はアウグスト・ブラン氏族の娘たちに委ねました。
弟と親友をやはり弟であるアリアスの暴走により《白痴の悪魔》に奪われてしまった。
かつての仇敵である《黒髪の冥王》や《嘆きの聖女》らと《白痴の悪魔》打倒を目論み、何度となくそれを成したのに再生特化型使徒真戦兵フォートレスの使徒再生核により阻まれてきました。
多大な犠牲を払い一度はナノ粒子の山に変えられても使徒再生核がある限り、数百年の後に復活して人類史を終焉させてきた《終末の獣》。
そのことが念頭にあるが為にディーンの「堕天計画」の正体に気づいてしまい、ゼダの紋章内では伏せておくつもりだった「フレアール・ジ・エンドレス」という究極の堕天使誕生計画を知る。
あっ、ちなみにゼダの紋章ではダブル機で魔王「フレアール・エンデ」で打ち止めになります。
未完の大器である《純白のフレアール》がなにと合体してエンデに変わるか?
そっちは次の戦中八話「乙女?たちの戦い」でルイスがヒントを語ります。
ディーンは仮初めのピリオドにより、エンデとして終わらせる。
けれどもその真意はアーサーの代でピリオドを取り去り、エンドレスに変える。
ディーン自身はルイスと共に弐番機mark-Ⅱをアーサーとメロウリンクに使わせ、フレアール・ジ・エンドレス初番機「天(あまつ)」で《終末戦争》と《聖戦》に挑みます。
それ自体が過去の人類の変遷と集大成であり、エドナが心血を注いで綴り続けた天技指南書と騎士たちの慟哭が作り上げた三体の究極決戦兵器の二つです。
単純に女皇戦争に勝つためだったらそこまでする必要なんてないのに《終末戦争》と《聖戦》に勝つために絶技使い同士の連携力を高めておく必要があるとか。
てことは、フリオニールとミィ(ミュー)が《終末戦争》にも参加するんかいなとかいう話。
ぶっちゃけてフリオくんは人の身でありながらストライクフリーダムガンダムみたいな真似しちゃう覚醒騎士・・・とか言ってるニュータイプ。
ディーンとシャアの関係みたいな話を第二幕のあとがきでしてるのは、それ自体が重大な伏線です。
でも、ディーンのモデルはシャアじゃなく、スターシステムで手塚治虫作品に「火の鳥」を含め、いろいろと出て来るロックなのだし、ルイスのモデルもジャンヌ・ダルクであると同時に「リボンの騎士」サファイア姫だったりします。
独裁者という独りよがりな人にならなかったアドルフは人の革新を信じて委ねるということをした。
「アドルフに告ぐ」でなく、「アドルフが告ぐ」になります。
そんなわけで新登場キャラクターのヴァスイム・セベップはティリンス・アウグスト・ブランの対であり、後の夫であり、謎多きヴェローム家の末裔。
レイスの血統たるレオハートそして《陽炎》のヒミツ。
ディーンに使えて、ロレインに使えて、阿羅叛とその孫と嫁に使えて、トリエルとその子供たちに使えて、アリョーネにはなぜか使えない。
そしてヴァスイムには使えたという事実が何を意味するのか?
それこそがフィンツが敵に回った真実です。
黒幕としてフィンツが出てくる第4幕以降にご期待ください。
《捕捉》
光の剣聖エドナ・ラルシュの物語は何処かに入れたいとは考えていましたが、ガイド編のキャラクター紹介を書くうちに、折角だから「さいごの夏」の終章として挿入すべきだと考えました。
ベルベにはとうとう分からなかったエドナ杯が奇跡を生む場だという根拠についてと、対の物語である「乙女?たちの戦い」との整合性やら、エドナ、マルガ、女神マーガレット、リュカインの絆として「エドナ杯」はエドナの死を悼んだ当時の人々がその功績を讃え、裏切り者の汚名を背負ってネームレスからネームドになった彼の苦悩や墓場まで持っていった真実を語ってあげるべきだと。
龍虫大戦、十字軍戦争、ボルニア戦役という前章で既に示していた三つの戦いについてエドナが龍皇子として、そして光の剣聖として、二人の剣皇と戦い抜き、老衰死した模様について、アルセニアの前世にあたるアウグスト・ブラン氏族の家祖でエドナを支えた愛妻クラリスを登場させること、そして女神マーガレットの真意やエドナの罪、アルフレッドの罪、真実の残酷さを示したいと考え、それがその後の歴史を左右する人物であるダイモス・エクセイル侯爵と主人公ディーンの繋がりを示したいとなりました。
歴史の分岐点としての龍虫大戦とそれの持っていた意味、使徒の真実と気づくことの出来なかったエリンと気づいたリュカインの師弟。
大戦と十字軍の発生を逆にしたり、ファーンの功績を隠したりした儀典史家がダイモスなのだとも匂わせる形にしたかった。
誇り高き黒豹ベーセ・ルガーとその想いに応えたコナン。
ファーンとナディアから生じたセスタのハイブリッド種と其処から派生した覇王エスタークや剣皇エセルについて裏打ちしなければとなりました。
轟天やエイブラハムについてもいきなり登場するのでなく、ワンクッション設けたかった。
ディーンは本当はベルベに龍虫たちと戦ってほしくなかった。
そんなことを考えながら夢中で書きました。
拙くて申し訳ないです。
永井文治郞
ゼダの紋章 第3幕 ライザーの戦い 永井 文治朗 @dy0524
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