第十三話
とある日のこと、一人の少女が姿を消したことがニュースになった。そしてその少女は殺人鬼の男と一緒に行動していたとされ、彼を早く捕まえろとの声がたくさん上がった。自身が何時殺されるのか分からないのに加えて何処かへ連れ去られるかもしれないという恐怖心故の物だろう。
「だってさ、お兄さん」
「まァあんな風に動いてたら誰かの目にも付くわな」
しかし二人は似たような笑みを浮かべてそして口を揃えて
「「まぁ(まっ)、態とだがな(なんだけど)」」
この二人は所謂共犯である。誘拐犯と被害者という謎の関係性の二人は彼の持つ隠れ家の一つに居た。因みに椛は制服のままだと非常に目立つので一旦家に帰り着替えた後に窓から飛び降りたところを瑞樹が連れ去っている。
「ねぇ、どうするの?ずっと此処に居る訳にも行かないよね?」
「まぁな。お前の境遇を世間に見せるってのも有るからなぁ……。一回サツなんかに見つからなきゃならねぇしで大変だな」
「ごめんなさい…。私が一緒に行くなんて言わなければ……」
椛が項垂れていると瑞樹が彼女の頭の上に手をおいて目を合わせる。
「安心しろよ、お前のせいじゃないからな。それにお前が嫌がっても連れて行くからな」
そう言い彼は微笑む。それに椛は顔を赤らめるが満更でもないようだ。そして二人ともテレビを見ながら瑞樹は彼女を膝の上に乗せて頭の上に顎を乗せてから話し出す。
「取り敢えずは一人ほど殺って…、人目を引きつけてからの方が良いか?」
「何で真っ先にその発想になるの?それだと逆に人が逃げない?」
「だから人が集まりやすい場所……。ショッピングモールとかで殺ってその後お前と合流して……。いや俺の傍に居てもらうか」
「嫌です!目の前で人が死ぬのを見たくないよ!?」
「お前なぁ……。お前が一緒にいるのは十人の命を奪ったクソ野郎なんだが?」
呆れながらも彼はこれからどうするのかについて考えていく。その返答に対して椛は体の向きを変えて彼の方に顔を向ける。
「私を助けてくれたお兄さんは優しいよ?」
「はぁ……。まぁ良いわ…。どうせ違うって言っても聞かねぇだろうし。じゃぁどうするかな」
そして二人は半日かけて思いついた策を行動に移す。
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「でまぁ、この後の事については後で話すが取り敢えずこんな所か」
そう言い彼は話を区切る。真治は彼の話を聞いて自身が気になったことを真っ先に問いかけた。
「貴方はどうして椛ちゃんのことを助けようと思ったんですか?」
「チッ。ンなもん同情以外に無ぇだろ。それとも他に理由があるとでも思ったのか?」
その問いに彼は少し腹立たし気に返答する。そして羽虫の集る蛍光灯に目を向ける彼は
「それじゃぁお前に聞くがよ、親に自分の地位を保つだけの道具としてしか見られずにクラスメイトからはストレスの捌け口にされる彼奴の事を聞いてどう思うんだ?」
「そ…それは……」
「言葉が出ねぇか?そりゃそうだろうなぁ世間では彼奴は悲劇の少女。俺に家族を奪われ洗脳された哀れな少女でしかねぇもんなぁ?彼奴の過去に目を向ける奴が一体何人居るってんだ?お前だってあの餓鬼に聞いたのはどうして俺みたいなクソ野郎と一緒に行動してたのかだけなんだろう?彼奴が語ったものがお前の何に触れて俺を弁護しようってなったか知らねぇがよ……、テメェのやるべき事を履き違えるんじゃねぇよ。殺すぞ?」
そして彼は弁護士に殺気をぶつける。それに驚き言葉が出ない青年を見た殺人鬼は薄ら笑みを浮かべながら殺気を収める。
「さて、気を取り直して続きを話そうか…。次に俺の内側に踏み込んでこようとしたらどうなるか分かったな?」
その言葉に青年はただ頷くことしか出来なかった
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