第六話

瑞樹は笑みを浮かべながら発砲する。その弾は目の前に立っていた男の顔スレスレを飛んでいき後ろのパイプに穴を開けていた。目の間に居た男は腰を抜かしてしまった


「さて、どうしてくれようか?」

「い……一体……何をする…つもりだ……………」

「何ってそんな事も分からねぇのかよ。つくづく低俗だなテメェ等は。此処は俺の縄張りなんだ、其処に侵入した挙げ句面倒事を起こしやがったんだ。それ相応の代償を払って貰わねぇとなァ?」


そう言い彼はベレッタM8000を目の前の男に照準を合わせる。それを見た他の男達は逃げようとするが壁を蹴って彼らの目の前に移動した瑞樹によって足を折られ移動できなくされてしまった


「さァ、楽しい楽しい喜劇殺しの時間だァ」


そう言うと瑞樹は近くに居た金髪の男を壁にナイフで縫い付ける。他の男は動けないし椛ですら肩を震わせ縮こまっている


「先ずは一本だァ」


そして腹部にナイフを刺していく。次に二本、三本と刺していくナイフの本数が増えていく。五本以上を指した時点で男は息絶えていた。しかし瑞樹は満足していなかったようで顔の前に足を上げてそのまま踏み潰した。周囲一帯に男の血が飛び散る。自身の顔についた返り血を舐めるとこちらを見ていた男の首を足だけでへし折る


「はぁ…もうちょい俺を楽しませてくれよ……。この程度で死んじまいやがってよぉ……」


ナイフを弄びながら歩き出す瑞樹。その姿は悪魔のようだった。暗闇で血を浴びた彼の姿は恐怖そのものである。椛は一目散に逃げていった


「やっと消えやがったか……。あの餓鬼のせいで殺しに行けなかったからなぁ。少し俺の憂さ晴らしに付き合ってくれよ?」


暗闇に醜い悲鳴と青年の笑い声が響いた。死体は頭を踏み潰され壁に縫い付けられたもの、体全体に穴が空いたもの、首が拉げてしまっているもの、腹部に少なくとも百以上の刃物を突き刺されたもの等全員がそれぞれ別の殺し方で殺されていた。そして壁に被害者のものと思われる血で描かれたMore comedy!楽しい喜劇をもっと!という文字が有った

それらの痕跡が警察に見つかり翌朝のニュースで放送され住民の恐怖を煽ったのは言うまでもない


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少女は部屋で震えていた。家に帰って湯船に浸かってもその震えは消えなかった。彼女は男が人を殺す瞬間を見たことがなかったから信じれなかった。彼が本当に人を殺しているだなんて。殺す時のあの楽しそうな顔はまだ中学生の少女にとっては恐怖でしかなかっただろう。


「(怖かった……。お兄さんの楽しそうな姿が、人を……殺すことを、あんなに楽しそうにしていただなんて)」


少女は男のことを正しく認識していなかった。だがその片鱗は見せていたはずだった。殺しを暇つぶしと言ったりしていたのだから少なくとも常人と思考は違うということは知ることはできたはずである


「(何で……あんな風に人を殺せるの……?)何でなの?」


彼女の中で生まれた疑問に対する答えを持つ人物は今日も町の住民を恐怖のどん底に陥れている。


「フハハハハハハハハハ!俺を捕まえてみせろよ正義の味方共!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

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