第四話

私が殺人鬼のお兄さんと話してから直ぐに家に帰ると、空には丸い月が浮かんでいました。こんな夜遅くに帰ったら親が何も言わないわけがなくて


「あら。こんな夜遅くに帰宅するなんて良い御身分ね?お父さんと一緒に寝る・・のかしら?」


それを聞いた私は顔を青ざめてしまいました。お母さんの言う一緒に寝るというのは文字通りの意味ではなく自分の子供を自分の夫に犯させることです。私はそれは嫌なので逃げようとします。それを見たお母さんは


「嫌なら早く帰ってくることね椛」

「はい……。分かりました」


嫌だなぁ。こんな日常がこれからも続いていくのかなぁ。なんてことを考えながら一人で晩御飯を食べたりしました。一人で食べることには慣れています。普通は慣れないんでしょうけど私にはそれが日常なので仕方ありません。


「どうして明日がやってくるのかな……。私に明日は要らないよ………」


そうして私の意識は暗い海の中へと消えていくのでした


学校では特にこれと言ったことはありませんでした。何か無いのかですって?いじめられるだけの日常に変化なんて早々起こりうるわけがありませんよ。放課後、私はボロボロのカバンにこれまたボロボロの教科書を入れて昨日お兄さんとあった路地裏に向かいます。


「あ、あのぉ〜。お兄さん居ますか?おにいさ〜ん!」


反応が返ってきません。居ないのでしょうか…?もう移動されたのでしょうか。なんてことを考えていると上から


「デケェ声出すなって前にも言ったろぉがよ。ったくせっかく寝てたってのにウルセェ餓鬼だなぁ……」


今日も会えた!やった!なんて声を口にしないようにしながら彼に声をかけます。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


男は少女が来たことにあまり良い気はしていないようで開口一発目から文句を口にする。それでも対応するところを見ると彼女に対する警戒は緩い様だ。殺人鬼は気怠げにしつつも彼女に声をかける。


「それで、殺人鬼の俺に一体何の用が御有りで?」


どこか仰々しい口調で要件を尋ねる殺人鬼。本来なら好んで足を踏み入れる場所ではないし、居ると分かってる脅威のもとに足を運ぶ少女に気が知れなかった


「だってお兄さん此処に居るって」

「はぁ……。お前なぁ、俺は殺人鬼なの分かってんのか?」

「知ってるよ。今までに5人の命を奪った殺人鬼だよね?」


当たり前のように答える少女の口から出るのは自身が犯した罪、その一部。実際にはもっと殺しているが公表されていないだけだろう、もしくはまだ知られていないの二択だ。それを聞いた殺人鬼は怪訝な顔をして


「だったら何で此処に来るんだよお前は…。被殺願望でもあるのかお前は」

「ッ…!?」


そう言われ驚く少女を見た殺人鬼は煙草を咥えて溜息を零す


「被殺願望を抱くねぇ…?見たとこ中学生のお前がそうなるってこたぁ……いじめか?」

「う……うん」

「それ以上は言わなくて良い。つうか俺が聞きたかねぇんだわ」

「……?殺人鬼だからそういうの気にしないと思ってた」

「お前は俺のことを血も涙もない悪魔とでも思ってんのか?」

「違うの?」


実際似たようなものだろう。彼も少女の言葉で僅かながら心を抉られるが無視する。間違ってはないし、何ならそれよりもたちが悪い気もする。殺した人間の首を切り落としたり殺し方を一人一人変えて殺している時点で悪魔のようなものだろう。


「で、お前はどうしたいんだ?」

「どうって何を…?」

「死を望むんだろ?だから今すぐ死ぬかって聞いてんだよ」


そして少女に突きつけられる拳銃は彼女の心臓に照準を定めていた

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