第三話

ええっと。どこまで話したっけ?あぁ…、あの餓鬼が俺の名を聞いて喜んでた所までか。其処から続きの話だ。

殺人鬼の名を聞いて喜ぶなんてことをしている少女を見て頭を抱える殺人鬼。今まで名前を名乗るなんてしなかったし、聞こうとする奴が居なかった。あんな奴がそう居てたまるかよ。


「で、殺人鬼の名前を聞いてどうすんだ?俺をケーサツにでも突き出す?」

「そんな事しません!」


と食い気味に否定する椛。それを聞いた青年、瑞樹がそれを聞いて首を傾げる。そして頭の可怪しい物を見るような目を浮かべる。


「なんですかその目は……」

「いやお前……。冷静に考えろよ?目の前に殺人鬼が居ます。ケーサツに連絡すれば捕まえれるかもしれません。もし捕まえれば報奨金すら出ますってのにお前はしませんとか言いやがる。殺人鬼の俺が言うのも何だが頭可怪しんじゃねぇのお前」

「……むぅ」

「ふてくされんな。殺人鬼に常識を問われてんじゃねぇよ餓鬼んちょ」


実際正気ではないと思う。殺人鬼を前にして安心するなんて一体どんな精神構造しているのだろうかと気にはするが気にするだけ無駄だと言い彼女に言及するのを諦める。そして不意に瑞樹は空を見上げる。


「どうかしたんですか?」

「お前門限はどうした?もうすぐで完全に日が暮れちまうぞ?」


そう言われスマホで時間を確認する少女。どうやら門限を過ぎていたようで慌てている。それを見た殺人鬼は煙草の火を消してから彼女に言う


「ほら、さっさと帰りやがれ。少なくとも此処は餓鬼が長居するような場所じゃねぇからな」

「あ、あの!」

「あ?まだ用があんのかよ」

「明日も此処に居ますか?」


彼女は不安そうにそれを聞く。少なくとも殺人鬼に聞く内容ではないだろう。しかし此処まで会話をしてどういった人間性をしているのかをある程度理解した殺人鬼はその質問に曖昧な返答を返す


「はぁ……。此処ら一帯が危険じゃねぇと判断したらな」


そう返すと彼女は笑みを浮かべてお辞儀をしてそのまま駆け足で帰路につく。それを見た青年は


「何だったんだアイツ。明日も来るんじゃねぇだろうな。はぁ…、別の拠点も見繕っとくべきかもなぁ」


そう言い暗闇に姿を消すのであった。とまぁ、これが俺がアイツと出会った時の話でな。アイツの心情が分からないって?安心しろよ。ここからはあの餓鬼から聞いたあの餓鬼目線での話だからな。少なくともこれには嘘はねぇよ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私はいじめにあっています。皆さんはいじめと聞いて一体どんなことを想像するでしょうか?沢山の人で一人を苦しめる?暴力で以て苦しめる、言葉の暴力で精神的に苦しめるなど様々なものを思い浮かべるでしょう。

親や、先生に相談はしてないのかですって?勿論しましたよ。まともに取り合ってはくれませんでしたけど…。先生は「いじめなんて存在しない」と言いました。お母さんは「いじめられるあなたが悪いのよ」と言いました。私は味方が居ないことで精神的に苦しんでいました。自殺すら考えてしまうほど。近所の人からはよく笑顔でいる優しい娘という風に思われるように笑顔の仮面を点けて生きていくのに疲れてしまったのです。そんな時に『殺人鬼がこの街に潜伏中』というニュースを見て、私はチャンスだと思いました。この人なら私をこの苦しみから救ってくれるかもしれないなんて考えて。そんな事を考えながら帰路についていると路地裏に歩いていく人影が居た。

急いで後を追ってみる。初めて入った路地裏はあまりにも暗くて光がないと足元も見えないくらい暗かった。何でこんな所に入っていったのかと考えもしかしたらという考えも有りました。長いこと歩いていると人影が見えました。其処に居たのは今話題の殺人鬼の新島瑞樹さんでした。彼の容姿は銀色に限りなく近い灰色の髪にアメジストのような紫紺色の瞳をしていてアイドルをしていてもおかしくないそんな容貌をしていました。口調は粗野で此方の心を抉ってくるような言葉ばかりですがどこか此方を心配するような感じの声色でもありました。そんな彼に私はまた会えますかと聞いてしまいました。彼は


「此処ら一体が危険じゃねぇと判断したらな」


と言ったのでまた会えるかもしれない。このままうまく行けば彼に私を殺してくれるかもしれないそんな希望を抱きながら彼の居た路地裏から家に帰ることにしました

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