第二話
それは、半年ほど前。深々と雨が降りしきるとある日の放課後のこと。学生たちは束の間の休みに喜び、放課後の街でクラスメイトと一緒に買物に行ったり、一人寂しく街を歩いたりなどしている時間帯。ネットニュースやTVニュースでこんな話題が出てきていた。
『指名手配の殺人鬼が逃亡中。近くの街に潜伏中か』
と言った内容で見る者、聞く者にとってはかなり恐怖心を刺激するようなものだった。誰だって怖いだろう?もしかしたら自分の近くに潜んでいるかもしれない。自分も殺されるかもしれないなんて思ってしまうだろう。繁華街ではそんなニュースが出ているというのに人の賑わいは色褪せることはなく。寧ろいつも以上に賑わっていた。
そんな中で一人の少女は路地裏に入っていく人影を見た。殺人鬼が潜伏しているというニュースが出ているのに、如何にもそういった場所にいそうなのに迷わず路地裏に入っていく姿を見て少女はその人物の後を追う。
「うわぁ……。さっきまで夕暮れだっていうのが分かってたのに…」
一歩路地裏に入ると其処は真っ暗で先も見通せないほどだった。流石にこんな所を灯りもなく歩くわけには行かないのでスマホのライトを点けて歩く。
「それにしてもあの人は何で此処に入っていったのかな。まさか…?いやそんなわけ無いか」
そんな事を言いながら、独り言をつぶやきながら暗闇の中を歩く。そして少女はついに人影を見つけた。少女は意を決してその人物に声をかける
「あ、あの〜……」
「……ア?」
その男はゆっくりと此方を振り返る。その顔を見た少女は言葉を失ってしまった。なぜなら其処に居たのは今話題の殺人鬼とよく似た人物だったからだ。
「それで、一体何の用だってんだ?餓鬼が好奇心で来るようなところじゃ無ぇだろ」
「こ…このろ…路地裏に入っていく人影が見えて………」
「それでつけてきたって?………はぁ。メンドクセェ奴に見つかったみてぇだな」
彼の口から出る言葉は棘だらけで少女の心を穿っていく物ばかり。本来なら腹が立って反論だったりしているだろうが出来なかった。もしかしたら目の前にいる彼は殺人鬼かもしれない。その可能性が頭のどこかでチラついて反論など出来なかった。彼の気を損ねたらと思うと体が動かなかった。
「で、お前中学生か?」
「は、はい。そうです……」
「ふ〜ん?お前は俺が何者なのか分かって話しかけたのか?」
その問いに彼女は答えられなかった。彼が言わんとすることが分かってしまったからだろう。顔色が悪くなっていく。無意識なのだろう、足を一歩後ろに下げてしまう。
「察しが良い様で何よりだ」
「あ…、あなたは…!殺人鬼!」
少女が大きな声で彼を指し示す言葉を口にした時殺人鬼は彼女の口を抑えた。
「デケェ声出すなよ。バレたら困るだろうが。それにお前も無事とは言い難いんだぜ?」
「え?」
目の前の彼が言っていることが理解できなかった。何故声を出すと無事じゃないのだろうか。それが顔に出ていたのだろう。少女の口から手を話してから彼は説明していく。
「そうだな……。お前はかなり顔が良いし、スタイルも良い。そんな奴がこんな所に居るってなったら、なァ?これ以上は言わなくても分かるだろ?」
それを聞いてどうなるのか想像してしまったのだろう。彼女の顔が青ざめていく。体もわずかに震えている。
「まぁ、そうなるかもしれねぇってだけだがな。実際にお前が犯されるかどうかは分からねぇからな」
「あ………あぁ……あ」
それを見た殺人鬼の彼は首を傾げていた。彼は続いて質問をする。
「全然ビビって無ぇなお前。目の前に殺人鬼が居ていつ殺されるか分からねぇのに
「え、えっと〜……」
彼女は何も答えなかった。ただ表情がくるくると変わっていて一体何を考えてるのか読めれなかった。
「何だ…?一体何が言いたいんだお前は」
「ええっと……。あなたは何で人を殺したの…?」
「ほう……?お前…頭おかしいのか…?殺人鬼に何を聞いてんだお前」
青年は呆れを見せながら壁に凭れる。彼の左手には黒く光る拳銃が握られていた。それを見た少女は驚いていた。彼は彼女の目線の先を辿って自分の左手に握られている銃を見る。
「お前これに興味があるのか?」
そう言って彼は銃を弄ぶ。時々鳴るカチャリという音に彼女は肩を震わせている。
「ま、仕方ねぇか。普通の人間はこれに触れることなんざ無ぇだろうしな」
「あ…あの…」
「ア?欲しいのか?まぁ欲しいって言われてもやらんが」
「ち、違います!あなたの名前を教えて下さい……」
彼はぽかんとした顔を見せた後溜息を吐き煙草を口に咥える。紫煙を燻らせていると彼は
「はぁ…。人に名を聞く時はまずは自分から名乗るのが筋ってもんだろ?」
「あ…!え、ええっと。
「ほんとに名乗る馬鹿が居るかよ……。調子狂うぜ…。
それを聞いた彼女、
まあ良い話が脱線しちまったな。続きといこう
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