第11話 あの日の続きをしませんか……?
「みなさん、土曜日はお疲れ様でした。楽しかったですね。ですが、これで終わりじゃないです」
私は、黒板をチョークでトントンと
「今日からSNSを
何も最初から上手くいくだなんてこれっぽっちも思わない。失敗をして、じゃあどうするべきかと
私としては、
カミクルカップルがどこか遠くを見つめていたのだ。さらに、
どういうこと……?
「……な、何かありました?」
問いかけるも、カップルちゃんは
「……あのさ、昨日のことなんだけれど」
「昨日って、日曜日ですよね……」
「そう……。あたしさ、昨日さ、広報部・百合の花のSNSアカウントでさ、土曜日のことを投稿しちゃったんだよね……」
「ええっ?! そうだったんですか?! それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「カミちゃんクルちゃんには言ったけれど、マナちゃんには言い出せなくってさ」
「もしかして……トラブルでも起きましたか……?」
おそるおそる
そこに表示されている文字列を見て、私は私の目を
「え……」
言葉がなかった。
「バズっちゃったんですよねー……私たち……。
一万……? 五万……? どういうこと……? 立ち
「ごめんマナちゃん、ごめんみんな。あたしが
返す言葉がなかった。というか、脳が正常に
ガラガラッ。
静まり返る教室。その
「お前たち……」
学校側とのネゴシエーター的ポジションのカミーアさんも、このときばかりは
こ、怖いけれど、ここは部長の私が
「どうされましたか……?」
「見たぞ、SNS」
「あー……はい。もうご
「ご覧になりましたか、だと? 当たり前だろっ!」
「ひ、ひぃっ?!?!?!」
見たことのない大人の
「ん? どうして泣いてるんだ?」
「……いや、だって……先生は私たちを……
「はあ……? どうしてそうなる」
「……へ?」
百合の花が全員でハモった「……へ?」だった。
何か
「SNSで顔出ししたこと、後悔してるんだろ?」
「……そうじゃないです。ただ、
「はあ、そういうことか。違うぞ。俺はなあ、お前らを
「褒めに……?」
「当たり前だろ。こんなにも沢山の方々に見てもらって、投稿についたコメントも
「えっ。ええええええぇぇぇえええええっ?!」
ハモりにハモり、お互いの顔を何度も見合わせる私たち。さっきからドキドキしっぱなしで、私の心臓はいまにも音を立てて
「ただしっ!」
「ただしだ。SNSってのは、良い側面もあるが、コインに裏表があるように、当然悪い側面だってある。使い方一つで、自分の人生だけでなく他人の人生も左右できてしまうような
いいな、と言われましても……。私は、言葉を
「もちろんです。先生、よろしくお願いします!」
そう言うと、三人も私に続いた。
「よろしくお願いしますっ!!!」
「うむ、よろしい。では、生徒会長。書類の手続きがあるから、職員室まで来てくれるか」
「はいっ……!」
二人が教室を出た後、残された三人はどんちゃん
幸せすぎるよ……!
夕とも夜とも言い難い時間に、私は学校の屋上にやってきた。どうにも落ち着かなくて、家に帰る気になれなかったのだ。
……あれから、広報部・百合の花は、手続きを経て、部活動として認められることとなった。その
私たちは、手を取り合って、喜びをわかち合った。
でも、冷静に考えてみたら、大変な事態に
いまの気持ちは「るんるん! でも、うーん……」といった感じ。この先、上手くやっていけるのかな……。
パープルの空を
「はあ……部活もより
「あたしが何だって?」
「いやだから、ミミさんとの関係性を――」
口が
「あたしとの関係性を……?」
イッツァパニック。
「いや、あの、その、これは、別に、何というか、何でもないというか、いや、でも、何でもあるというか、いや、その、やっぱり特に深い意味はないというか」
「マナちゃんが壊れた……」
口を開けて、目を見開いて、
私は、いつもの自分に戻ろうと
「いや、あの、その、これは――」
「さっきと変わってないよっ!!!」
ミミさんのツッコミが空に
……あれれ、どうしちゃったの私! ドードー、ドードー。……よし、今度こそ。
「えーっと……わ、私が言いたかったのは……部活の知名度が上がったから、もっともっと頑張らないと、ってことで……」
私が言葉を選んで発言していることは、誰の目から見ても明らかだった。
ミミさんは、
「だ、か、ら。あたしが
「んー。ミミさん、意地悪です!」
何を言おうとしてたかなんて、ミミさんのことだから見抜いているはずだ。なのにミミさんは、わざわざ私の口から言わせようとするのだ。
「意地悪? 何のこと? ねー、マナちゃーん、早く言ってよー」
「んー! も―知りませんっ!」
ぷいっとそっぽを向く私。ミミさんはすかさず、私の正面に回ってきた。
「ごめんごめん。……はあ、しゃーない。あたしから言うか。ってか、本当はあたしから言うべきだしね」
そう言って、ミミさんはスカートのポケットから、小さな箱を二つ取り出した。一つは私が渡した赤い箱、もう一つの青い箱は……?
小さくため息を吐くミミさん。ツインテールの
「……あのさ、この間はありがと」
「こ、こちらこそっ!」
「ちょ、声大きいって」
「すみません、つい……」
「って、それはよくて。だからさ……あのさ、うーん。こういうときって何て言えばいいんだろ。何て言えばいいと思う?」
「え……? 私に訊かれても……」
「そっか、そだよね……」
会話が
一体いつまでこうしているんだろう、と気が
口にしようとしている、形にしようとしている、伝えようとしている。そわそわして、何かを言おうとして、またそわそわして。……私は、そんなミミさんのことが好きだった。
人生のなかで、これだけはケリをつけなければならないと、直感でわかった。たとえそれが不幸な結果に終わっても、答えを出さないと、区切りを
もし回答を
きっと、今日の日のことを引きずる。
時間は解決してくれないから。忘れても、ふと思い出す。私たち自身が向き合わないと、
だから、未来の私が納得できる選択を――。
私は、ミミさんの手から赤い箱を取って、なかに入っていた
ここでようやく私と目を合わせてくれるミミさん。今度は、ミミさんが青い箱にある指輪を、私の指にはめてくれる。そのまま、ミミさんは言葉を
「あの日、途中でどっかに行っちゃってごめん」
「これを買いに行ってくれたんですか」
「うん……」
恥ずかしそうに
このうえない幸せ。ミミさんも同じだったらいいな。
「ミミさん」
「……うん、言うよ。あたしもさ、マナちゃんのことが好きなんだ。友達としてじゃない。一人の女のこととして好き。だからさ、ずっと一緒にいてほしい。あたしのそばにいてほしい」
「嬉しいです。心から嬉しいです」
「……じゃあ」
肩が
時間にしてみたら一瞬の出来事。けれど、感じたことのない幸せが、この胸のなかに
「
ミミさんの言葉に、私は笑って
カースト上位の女子から「女の子が女の子を好きとかおかしいっ!」と言われてハブられたので、高校デビューをして百合を満喫できる部活を作ります! 水本しおん @shion_mizumoto
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