第10話 桜色の感情を伝える、桜の木の下で……
今日は待ちに待った
それと同時に広報部・百合の花の
気合いが入りすぎたあまり、約束の駅前の地には私が一番乗り。ちょこっとだけ早すぎたかも……。
パーカーの
ホォーヅリィの南部ということもあり、駅員さんは不在。
「マナちゃーんっ!」
ホームの方から私を呼ぶ声がして、私は振り返った。私の次に
改札を抜けたミミさんは
「ごめん、待った?」
「ううん。私が早すぎたんです」
「あー! もしかして、楽しみにしてて早く来ちゃったのっ!?」
「それはまあ……ちょっとだけ、そうです……。こ、広報部・百合の花の初めてのロケですから」
「嘘つけー! こんな可愛い格好しちゃって、めちゃくちゃ楽しみにしてたんだろー! こんにゃろー!」
「えっ、あっ、んんっ?!??」
こしょこしょしてくるミミさん。私は
両手を挙げて
「や、や、や、や、やめてくださぁぁぁああああははははっ!!!!」
「ダメダメ! ちゃんと『めちゃくちゃ楽しみにしてました!』って
「あはははっ! んーっ! わかりましたっ! 言いますっ! 言いますからっ! 私、今日の日を楽しみにしてましたっ!」
「それだけっ? めちゃくちゃ、でしょ?!」
「あははははっ! あーはっはっはっ! はい! はいっ! めちゃくちゃ楽しみにしてました!」
「
そう言って、ミミさんはようやく
こちょこちょ
カミーアさんは、大人っぽい
「ごめんなさい、遅かった?」
カミーアさんが頭を下げると、それにクルミさんも続いた。
私は、「まったく遅くなかったよ」と伝えたかったのに……私よりも先に、ミミさんが
「おー! お二人とも、休日の
「カップルというのは、大体が休日の昼間からお熱くなるものなのです」
「言うねえ。しっかし、私も早くマナちゃんとあっつあつになりたいなあ……」
ちらと私を見て、ウインクをするミミさん。私は、返す言葉に困って、
そんなこと言われたら、
「立ち話もほどほどにして、早速ですがクイラの丘に行きましょうね」
でも、クルミさんの言ったことは
「そうですね。行きましょうか」
私の言葉で、四人は息を揃え、
「えいえいおー!」
「あれだなっ!」
「おー!」
三人の声がハモるほどの
もちろん
赤青黄色、それだけじゃない。もっともっと沢山の色の花が、丘を
「上手く言い表せませんが、ここから
私がそうつぶやくと、カミーアさんが眼鏡を整えながら
「はい、心が
「すごしやすい
「最後ので台無しに?!」
うんうんと
私が
「でもまあ、改めてさ、これを部活にできるかもしれないって、
おてんばなミミさんが口にしたことは、百合の花の
そして、いま私の胸のなかに感じているすべてを、SNSのその先にいるみんなにも伝えていきたいな……。
私は、リュックから
「そろそろ一枚、
カミーアさんとクルミさんは「いいですねー!」と言ってくれた。けれど、ミミさんはかぶりを振って、私のカメラを取り上げてしまった。
「嫌でした……?」
「ううん、そうじゃなくて。記念すべき最初の一枚なんだし、四人で
「ああ、そういう……ミミさんはやっぱり素敵です……」
「ん? 何か言った?」
「いえ。四人一緒、それが良いですね!」
パシャッ。
広報部・百合の花の最初の一枚は、スマホの
「想像よりも
花の香りを感じながら、私はそう口にした。
「ね。成長したはずなのですが、子どものころよりもずっと
「マナ&カミちゃんに同意ですね。これだけ運動すれば、きっとお昼ご飯も美味しいはずですね」
過去にこのキツさを経験していたカミクルカップルも、数年ぶりだからか
ただ、
「この程度でへばってたら将来動けなくなるよ? やっぱ、あたしみたいに運動を
「ミミさんの言うことも一理あるのですが。ミミさん、先生方からマークされていますよ。スポーツは誰よりもできるけれど、勉強に
「ええっ?! あたしマークされてるの?! カミーアちゃんが言うんだから
ありあり、というか、もう確実にマークされていると思う……。まったく、
しばらく見つめていると、
ため息を吐く
「消えちゃったね」
二人には聞こえないように、小声で
それから五分ほど、私たちは
「お昼にしよっか!」
ミミさんの一言で、それぞれが持ち寄ったお弁当を広げた。あえて言うまでもなけれど、クルミさんのお弁当の量は、私たちの三倍以上はあった。主に肉っ! 茶色くて美味しそうなお弁当だ。
クルミさんの幸せそうな笑みを、彼女の
そんな私のお弁当は親子丼! ではなくて、サンドイッチ! 手間がかからなくて美味しい、ピクニックの王道だ。ちなみに、ミミさんもカミーアさんのお弁当箱のなかには、おにぎり、タコさんウィンナー、卵焼きなどなど、王道の食べ物が
はあ。可愛い女の子たちと食べるお昼ご飯って、
文字通り私の
「頬が落ちそうになってるじゃん?! どゆこと?!」
「心から頬が落ちそうになる場面に立ち会えば、誰だってこうなりますよ」
「ほんとになってるから信じるしかないな?!」
桜が咲き
クイラの丘は
鳥たちが運んできた風が、桜の花びらをふわっと宙に羽ばたかせる。私は、花びらたちと一緒にジャンプをして、一緒に宙へと浮かんだ。
そして、地に足がついて、またもや大の字になる。あのミミさんでさえ、体力の
すー。すー。すー。
カミクルカップルの可愛い
この日のミミさんは、やけに
距離が
「ねえ、マナちゃん。あたしのこと……どう思ってる……?」
意地悪な質問だった。そんなこと、ミミさんが一番よく知っているくせに、とっくに気付いているくせに……。だけど私は、そういう彼女も好きだ。
私は、
「……私は。私は……ミミさんのことが……ミミさんのことが……一人の女の子として……」
あとちょっとのところで、私の
「ダメだよマナちゃん。もっと小さな声で言って。二人が起きちゃう」
「うん……。私、ミミさんのことが……」
私は、パンツのポケットから、赤色の小さな箱を取り出した。その箱を開いて、ミミさんに手渡した。
「好きです。どうしていいのかわからないくらい、好きなんです」
どうなるのかなとそわそわしていたら……カミーアさんが目を覚ましてしまった。
「……ああ、寝ちゃってた」
クルミさんもゆっくり身体を起こした。
「はー、
ミミさんは、二人に見つからないように、小箱をポケットにしまって、そのまま立ち上がった。
「
結局その日、ミミさんからの返事を聞く機会を逃してしまった。帰り際、何かあるかなと期待していたのに、ミミさんは「用事ができたっ!」と言い残して
プレゼントは受け取ってくれたし、一応成功だったのかな……。
夜になっても、お布団のなかで
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