第28話 神宿る器
ゼオたちの駆る巨人、
それが一体何なのか、専門家と言える設計士のセヴァイトに説明してもらうこととなった。
彼に案内されるまま、ゼオたちは倉庫の奥へと向かう。重厚な扉を開き中へ入ると、そこは応接室だった。無骨なイメージのあった倉庫とは違い、貴族の館の一室のように優雅な空間だ。
ソファやテーブルは年季が入っており、明らかに安物ではない。
「どうした、座れよ」
想像と違った雰囲気の場所に通され、ゼオとファンガルは恐る恐るソファに座った。
緊張していないのはレヴンとハルラ、そしてゼオのリュックに息を潜めているヒューグくらいだ。
三百年前から時を超えて蘇ったヒューグにとって、現代で最も不可解な存在が
部屋の主であるセヴァイトが指を鳴らすと、奥からガタンガタンと音がした。
直後、ティーセットを持った女性が姿を現した。彼女は表情一つ変えず、ティーカップに紅茶を注いでいく。
その様子はあまりに整いすぎていた。
人間離れしている、と言えるほどに。
「
ゼオの不思議そうな顔に気づいたのか、注がれた紅茶を飲みながらセヴァイトが言う。
ゼオは記憶喪失であり、もちろんその単語にも覚えはない。
「知らないか。この辺はお前らでも教えられただろうに」
「いやいや、専門家に教えてもらうのが一番でしょう」
不機嫌そうに話すセヴァイトをレヴンがそう言ってなだめた。彼は顔を背けてフンと鼻を鳴らした。
「まあ、ちょうどいい。コイツも
「長い話になる。紅茶でも飲みながら聞いてくれ」
そう言われ、ゼオは彼の言う
セヴァイトの出身が
その異邦の風味を楽しみながら、ゼオはセヴァイトの話に意識を向けた。
「───
「この二つの技術が一つにまとまり、
たった五年。
あの巨大な騎士たちが生まれて、それだけの時間しか経っていないのだ。
「機体も
そこまで言うとセヴァイトは
「コイツが関係があると言ったのは機体のほうだ。あの巨大な鋼の身体を作る技術には
サイズは随分と違うがな、と付け加えたうえで彼は続けた。
「……三百年前、魔王は魔族を率い人間界へと侵攻した。魔王は撤退したが、色々と厄介なものを残していきやがった」
「何にでも食らいつき、大地の魔力を断ち切る魔龍が最たるものだ。更に魔界に戻れず人間界に取り残された凶暴な魔物だってわんさかいた」
「そういう連中にどう対処するのか。この三百年、答えを探し続けてきた」
ゼオのリュックの中で、ヒューグは思う。
三百年前、自分の死後訪れた混沌の時代。
その時代を生き抜いた主、ランメアの苦労は想像できない。
「当時のヤツらが選んだ方法は魔法だった」
「だが、限られた人間だけが使える『才能』としての魔法では限度がある。魔法を使える人間の数は減り続けていたからな」
「魔法を『技術』で再現する……その目的で生まれた魔導工学は長い時間をかけ様々な魔法を再現した」
「
「ソイツは魔物や魔龍に負けない体格を持った鋼の巨人で、攻撃用の魔法を撃ち出す砲台を背負っている……」
「ほんの数十年前までは、そんな出来損ないの子供のおもちゃのようなシロモノが魔物退治に使われていたそうだ。今となっちゃとんだ笑い話だがな」
ククク、とセヴァイトは楽しそうに笑う。ゼオはあまり面白いとは思わないが、専門家の彼にとっては笑える話なのかもしれない。
だが周りを見ればレヴンもハルラもファンガルも笑っていなかった。
一人でひとしきり笑った後、セヴァイトは話を戻した。
「時代が下るにつれ魔導工学は進歩し、
「だが、およそ三十年前に
「これ以上、
「……そんな
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