本編

〇該当パート


 第1話後半の一部シーン(ダイジェスト風味)



〇ここから本編



 そのバトルを見た者は言葉を失う。プロゲーマークラスのプレイヤーのプレイを見られたというのもあるかもしれないが……。


「信じられない」


 ある男性は、この場面を見て驚くと同時にCGで表示されたスコアボードを確認する。そして、その名前に驚くことに。


「ブローディア? 聞いたことのないプレイヤーだな。ペアを組んでいたのは……!」


 片方のプレイヤーは見覚えのない名前で、知名度があるとは思えない。あれだけのテクニックを披露したのは、偶然という可能性はあるだろう。


 しかし、その相方はハルカと表示されており、その名前には覚えがあった。


(馬鹿な、あの月坂ハルカが復帰、だと?)


 今から二か月に満たない時期の話になるが、ある有名プレイヤーがチートを疑われて炎上したという話題がSNSで拡散していたのを思い出す。


 そのプレイヤーの名前が月坂(つきさか)ハルカだったのである。


 彼女の実力は、ある意味でも想像を絶する……というワードが適切なのかは不明だが、そうとしか例えようがない。


 実際、SNS上では『相手が月坂の段階で負けが確定』や『違法カジノでは月坂のマッチングが扱えない』などのうわさも絶えない位には、チートと言っても差し支えはないだろう。


「調べてみるか……」


 そして、彼はスマホであのプレイヤーが月坂ハルカなのか、と質問をするのだが……これが後に事件の元凶となる。



 ゲームのプレイが終わってからは、そのまま二人とも帰路に……という流れになった。長期滞在に関して言えば、二人とも考えていない様子。


 午後三時をゲームコーナーのデジタル時計は表示しているが、閉店時間にはまだまだ余裕があると言えるだろうか。


 レインボーローズは駐輪場に置かれた自転車で、ハルカはスマホで電車の遅延情報を確認して草加駅の方へと歩いていく。


 お互いにマッチングで遭遇したという事は全く認識しておらず、そこそこの実力者がパートナーだった、という認識にとどまっている。



 ハルカが電車に乗り、竹ノ塚駅で降りるのだが……駅の改札口近辺で何か怪しい一団がいるのに気づく。


 別の人物をターゲットにしているわけではなく、明らかに狙っているのは自分だった。他の無関係な人物も巻き込んだら、警察沙汰になるからである。


「まさか、お前が復帰をしていたとはな」


 一人の男性がハルカを発見し、改札口へ向かおうとしている彼女を足止めする。


「復帰? 何の話?」


 さすがのハルカも因縁を付けられるようなことに覚えがない。冷静に対応しようとは考えるが……。


 過去に別のゲームでチート騒ぎがあったのだが、それは既にネットガーディアンが冤罪と公表しているはずだ。


 それをまた拡散しようというのか、それとも……とハルカは考えて発言をする。


「さっきの『ハッキングオブウォーゲーム』、あれでマッチングしていただろう?」


 別の男性プレイヤーが出てきた所で、ようやく話の内容が若干読めてきた。ハルカの目の前にいるのは、先ほどのプレイで敗北したプレイヤーだったのである。


 それが他のプレイヤーを巻き込み、集団で一人のプレイヤーを取り囲むという行為に及んでいる段階で、発覚すればプロゲーマーライセンスはく奪は確実だろう。


「確かにプレイはしていたけど、それとこれとは別の話。ゲームが終われば、ノーサイド……それがプロゲーマーライセンスを持つ者の原則でしょ?」


 ハルカの一言を無視し、別のプレイヤーが何かのフィールドを展開する。周囲を見たハルカも、何が何だか……という表情だが、それが何であるかは先ほども目撃済みだ。


「ARフィールド? あなたたち、まさか……!」


 展開されていた見覚えのあるもの、それは『ハッキングオブウォーゲーム』でも使用されていた拡張現実フィールドである。


 これが展開されれば、ARゲーム限定で使用できる武器などのガジェット類も使用可能。つまり……対戦格闘などにおける乱入バトルのような展開になるのだ。


 それに加え、相手プレイヤーにとある演出がない事に気づく。プロゲーマーであるならば、ランク表示演出がARゲームではあるはず。


 あの時のハルカは、ライセンスが停止状態に加えてアカウントも新規作成した物……だが。



 ロングソードを持ったプレイヤーがハルカに切りかかろうとした、その時……。


『まさか、駅ナカでARゲームが出来る……って、普通は思わないよね』


 ハルカの目の前に現れた人物、その姿を見て別の意味でも驚きを隠せなかった。


 SFに出てくるようなパワードスーツを身にまとったその姿は、あの時にマッチングしたプレイヤーそのものと言える。


 ゲーミングパソコンのように七色に光りそうなライン、SFでも見ないような形状の特殊なブレード……何もかもがあのプレイヤーと一緒。


 ARゲームの場合、アーマーはそのまま他のゲームでも使える場合もあるのだが……このケースはイレギュラー過ぎた。


「あなたは一体……?」


 ハルカは唐突に表れた人物に対してたずねるが、それを向こうが効いているとは思えない。


 それに加えて、既に複数人のプレイヤーを先ほどのゲームと同じようにさくっと片付けているのだ。


『こっちもね、手加減のプレイはされると迷惑だけど、チートプレイは他のプレイヤーにも迷惑をかけるのよ!』


 最後の一人を片付けた際の一言、それはハルカ自身にも刺さるものがあった。あの時、こういった声をあげてくれるプレイヤーがいたら……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

④ハッキングオブウォーゲーム アーカーシャチャンネル @akari-novel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ