第11話 一周忌(最終話)
「魔王」はきっともう常連客に飲まれたのでしょう。
先日ささやかに店長とマスター、教授と数人の常連客さんで一周忌らしきものをやりました。
「献杯」をしてビールとレモンサワーをカウンターに左の席に置きました。
教授は彼の実家にご連絡をしたそうですが、やはりまたお母さまには泣かれてしまったと言ってましたね。
もう1年です、1年前になるのです。
違和感というか居心地の悪さはほとんどなくなりました。
みなさんも僕も“異世界”から徐々に帰還したのでしょう。
冒頭に書きましたが、私も居心地の悪さはほぼ消えてしまっています。
“異世界”がいつのまにか現実世界に変わっています。
「ぼちぼち来そうな感じ」
はなくなり
「昔だったら今頃来ただろうな…」
そんな気持ちになりました。
日常に戻ってうれしいのかさびしいのか…よくわからないです。
月日というものはいろいろと思わせてくれますね。
ただこれだけは残っています。
“誰にでも平等に「明日が来る」のではない”
振り返ると昨年の今頃にはそんな童話を投稿しています。
年をとったということなのかな…
実家の父も手術や入院を繰り返しているし…
きっとこんなことをいつも書いているヨット部の友人や先輩に話したら
「へ~、ついに焼きがまわったな…」
とニヤつかれるか…
それとも
「やっときづいたか…」
と呆れられるかも…。
さて…
彼はあちらの世界で何をしているのでしょう。
夢にも出ないし、常連客さんから
「見たぜ…」
とのお話もまだないし…。
気配だけでもたまにはね…、
1杯ぐらいレモンサワー奢るのにな。
了
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