快速列車は止まらない Chapter5 ~晴天と曇天~

chapter5 ~晴天と曇天~


霜月が終わり、師走に入った。今日は平日なので、3人とも教室で静かに授業を受けていた。

1限は国語だ。

ひばりは勉強全般というか運動も得意ではない。運動はただでさえ苦手なうえに、圧倒的インドア派だったのが重なり

平均と大きな差がついている。まあそれは勉強も同じだ。

ちなみにひばり的には清や梨花も同じくらい勉強ができないと思っている。

現に学校のテストは大差ない点となっている。

そしてその中でもひばりは国語が苦手だった。

「はぁ」と大きなため息をついて窓の外を見る。

空には大きな雲が4つくらいあった。その周りに小さな雲が無数に散りばめられている。

「はい、じゃあここで引きこもりの主人公がお兄さんのために外出するんだけどこの時の

主人公の気持ちわかる人」

「人の気持ちなんてわかるわけないじゃん…」

ひばりは視線を教科書に戻して、本文を読み返してみる。

ただただ長い文章が散りばめられていて、内容が頭に入ってこない。

すると清が手を挙げて先生にあてられた。

「え?清くん分かるの?」

「もちろん」

すご…と言葉にならない声が出る。

そして清は先生の想定する答えをはるかに超える、纏まっていてなおかつ内容も十分な回答をした。

「すごいね、新村くん」

「このくらいならできますよ、先生」

「そっかぁ、じゃあ次のテスト"も"期待しておくね」

「…えぇ…」

すこしだけ清の言葉にためらいがあったように感じた。

2限は数学だった。

まあ相変わらずひばりはできない。

しかし清はこの授業内の問題演習の時に、40分かかる想定のものを13分でこなして

余った時間で科学の教科書を眺めていた。

「す、すご」

みふゆですらそう言っていた。


_____


「お父さん、そういえばさ、家にひばりを1人おいて何も言わずに出てきたから、電話してみてもいい?」

「えぇ、何も言わずに来たんかい…はよ電話してあげなさい」

「おっけー」

ぷぷぷぷ…プルルルル…プルルルル…プルルルル…

「あれ、出ないんだけど」

「なんでだろうな、もう18時になるし家にいると思うんだが…」

「もしなんかあったら…」

「…」

「…」

「家に戻りたいか?陽太」

「え?」

「家に戻りたいか?」

「う、うん、少しだけ、でもすぐ戻る…じゃだめ?」

「…」

「…」

「…行ってこい、そして…」

「そ、そして?」


「連れてこい」


「は?」


「あいつは何も知らないが、もう来年高校生になるんだ。この状況を伝えても受け入れてくれるだろう」

とてもひばりに受け止められるとは思えないが、ここは…

「うん…わかった…」

対策を早急に…

考えないと。

「でも学業に支障をきたすのは困るから冬休みになってから連れてきてくれ」

「うん…わかったよ」

「信夫!陽太!ごはんよ!」

「はーい…」


俺は今、国道425号と国道371号の交わる龍神という小さな村で過ごしている…


_____


テレビの中で天気予報の人が言う。

「いやぁ今日はこの時期にしては珍しく過ごしやすい秋の陽気といった感じでしたね。

しかしそれも今日で終わりです。明日は全国的に曇りか雨で最高気温は10度を下回るでしょう。

最低気温は東北や北陸では0度を下回りそうです」

「明日は寒そうねぇ」

「そうだなぁ、…」


ひばりはみふゆの父親が小さく独り言を言っているのを見た。

えっと

3文字で た な べ って言ってたような。

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快速列車は止まらない【かいとま】 @K-nasubi

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