第二話
視界がぐらぐらと揺れる。
息がうまくできない。
後ろからは木に寄りかかり呼吸を整える女。
転生してからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
紆余曲折あって、青年と少女は追われていた。
青年の名は 歯針 楽號(はばりの らごう)
目にかかりそうな前髪の右半分の白髪が
辺り一面の雪景色と被る。
その後ろを苦しそうに呼吸をしながら歩くのは小麦色の髪の少女だ。
レヴリ・グラニーテ
それが彼女の名前でありグラニーテファミリーというマフィアの首領である。
しかし彼女はいまや指名手配犯であり
命を狙われている。
グラニーテファミリーは3日前襲撃を
受け絶望的であった。
レヴリの目的はこの名前と目を
次の首領(ボス)へ継承することであり
その継承者こそ、
娘のレヴリ・グラニーテである。
楽號はレヴリという名の人物の死を見続けなければならない。
これは決まりのようでもあり天命のようでもある。 自殺したところでその運命は回避できず、
他殺された場合、事故や殺害、老衰した場合も今のところこの世界に転生する。
百回は転生しているが大陸も国も地方も全く変わっていないところを見ると楽號自身
この異世界に転生し続けている。
元の世界をアルファ世界線と仮定し、
今の世界線。ベータ世界線とした場合
ベータ世界線で死んでも生まれ変わる先はベータ世界線なのだ。
最初に死を経験した元の世界には一度も転生出来ていない点を見るとこの考察は正しい筈だ。
どちらにせよ。ここで課せられる使命を淡々とこなしていくしかない。
どちらにせよ転生する運命までもは変えられないのだから。
きっとあと百回死んでも
この歯車からは逃れられないのだろう。
グラニーテファミリーを陰ながら支えてきた彼は幾度となく死を経験してきて気づいたことがもう一つある。
転生すると次の自分…つまり転生後 姿形が変わった自分に楽號という名前と記憶を継承される。
そしていつのまにかこのグラニーテファミリーのレヴリという名の女性を守る立場になるのだ。
100万回の異世界転生者は恋愛フラグを作り過ぎている トナリ @Tonari
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