「……あれ？」

　しかし、我が発動した魔術は一向に発動しようとせず、それどころか魔法陣は綺麗さっぱり跡形もなく消え去ってしまうではないか。

　行使した魔術を打ち消すと言うのはまだ、あの忌々しい勇者もしていたので分かる。

　しかしながら、設置する段階や起動前に魔法陣を崩して無効化したのならばいざ知らず、設置し終えた魔法陣を、しかも魔力を流して起動した段階で発動を無効化するなどとあの勇者ですらできなかった芸当ではないか。

「貴様何をしたのじゃっ！？」

「何って、普通に魔法陣を破壊しただけだが？」

「は、破壊……じゃと？　起動する前の魔法陣であればまだ分かるが、起動し終えた魔法陣を破壊するなどできる筈が無かろうっ！！　それであれば起動した魔法陣の攻撃を打ち消したと言った方がまだわかるわっ！！」

「まぁ、それもできなくはないが、それは魔術ではなく起動系能力としての扱いだからカウンタースペルでは無効化できないし、起動系能力を無効化する魔術は使いどころが無さ過ぎて今即座に使えるストックには入れてないんだよな……。　ちなみに誤解しているようだから訂正させてもらうと、魔法陣に魔力を注いだだけでは起動したとは言わないんだよな。　実際に君の言う通り魔法陣を起動してしまったら魔法陣を壊したところで行使された効果を消すわけではないからな。　だから相手が魔力を支払った事を確認したところで破壊した。　ゲームではそんな事優先権の関係でできないのでリアルだからこそできる荒業とも言えるな。　言い換えると優先権という概念も無いこの世界では、例え魔王相手でも俺は負ける要素が無いという事だな」

　そう言って無駄に偉そうな表情で気持ちよさそうに語るオジサンを見て無性に腹が立ってくると同時に、このオジサンであればもしかしたら我を解放してくれるかもしれないという淡い期待をしてしまう。

　しかし、直ぐにそんな期待は捨てさる。

　もしこのオジサンが、例え我を解放できたとしても魔王である我を解放する理由が無いからであろる。

　であれば希望を持っている分傷つくのであれば持たない方がましであろう。

「それで、俺はどうすれば良い？」

「ふん、どうせ今から我を殺すのであろう？　さっさと殺せばいいっ！！」

　どうせ呪いのせいで魔王に成っているといっても信じてくれないだろうし、であればさっさと殺してくれた方がまだましである。

「本当に良いのか？　なんか【魔王化の呪い】っているのは解術しなくて良いのか？　てかこの呪いのせいで成りたくもない魔王に成ってしまっているんじゃないのか？」