第123話 オッサンが言う鳥頭


 そう思っていたのにこのオッサンは私の心を見透かしていたかのように『魔王化の呪いを解かなくても良いのか?』と聞いてくるではないか。


「な、何で……っ!?」

「なんでって、鑑定してみればそんなバッドステータスが確認できたからな。 というかそもそも初めて戦う相手であればまずは鑑定スキルを使って相手の弱点を確認するのが常識なんじゃないのか?」

「我を鑑定できる者など勇者しか出会った事がないわっ!! 普通であればレベルが違い過ぎて鑑定などできる筈がなかろうっ!! それが何故お主は私を鑑定できたのじゃっ!? そもそも勇者ではないタダのオッサンが我を鑑定できること自体がおかしいのじゃっ!!」


 そして私がこうして話している間も、私の意志には関係なく身体が勝手に動き、魔力を練って目の前のオッサンを殺すために魔術を行使しつづけており、それら魔術は全てオッサン曰く『カウンタースペル』という魔術の数々によって無効化(打ち消し)されていくではないか。


 私を鑑定できた事や、私の魔術をことごとく無効化していくこのオッサンは明らかに遺脱した存在であると言えよう。


「そんなオッサンオッサン言うなよ、 これでもまだ二十代なんだぞっ!?」

「いまオッサンがオッサンである事なんか関係ないであろうっ!! いくらオッサンが凄くとも魔王は勇者以外では勝てぬ存在じゃっ!! 悪い事は言わぬっ! 早くここから逃げるのじゃっ!!」


 流石に一瞬とはいえ忘れかけていた人間らしさや、助かるかもと思えた希望を見せてくれたオッサンを私は殺したくはないと思った。


 私を解放するには殺すしか他に道はなく、そして私を殺す事ができるのは勇者のみというのがこの世界の常識である。


 いくらこのオッサンが『魔王化の呪い』を解くことが出来ると言われても、いくら何でも無理だろう。


「いや、なんで逃げる必要があるんだよ?」

「なんでって、魔王は勇者にしか殺せないからじゃっ!! それがどういう意味か分からないお主ではなかろうっ!! オッサンがいくら頑張ってくれたところでどうにもならないのじゃっ!! 私に殺される前に──」

「うるせぇ。 魔王化の呪いを消すことが俺にはできないみたいな言い方をしやがって!! 仮にもし俺がかの有名な無差別パンチを繰り出す鳥頭先輩だったら出会って三秒でお前ぶん殴られているぞ? 殴られないだけマシだと思えよ?」

「は? 鳥頭? 誰それ?」


 このオッサンが言う鳥頭が、オッサンの言うとりの人物だからといって、魔王化の呪いを解術できるわけが無い。

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