第114話 きっとそうに違いない


 一体どのような威力の魔術となるのか……想像しただけで脳にドーパミンがドパドパ出ているのが自分でも分かる程興奮して来るではないか。


 あぁ、楽しみだ。





 俺はレンブラントがまさか本当にこのスタンピードを止めに行くとは思わなかった。


 レンブラントの事である。


 なんだかんだ言って論点をずらしてはぐらかしてトンズラするものと思っていた。


 そもそもレンブラントごときがこのスタンピードを止められる筈が無いだろうし、その事はレンブラント自身も理解できているであろう。


 その為レンブラントがこのスタンピードを止めに行ったという事は自殺行為でしかないという事を本人も分かっている筈である。


 そして、どうやっているのかは分からないのだが、器用に空を浮遊しながら先にあるスタンピードの先頭部分へと飛んで行き、レンブラントの姿が見えなくなったところで俺は我慢する事を止めて笑い出す。


「くくく………くはははははははっ!! ついに、ついにあの目障りなゴミが消えてくれるっ!! どうやって殺してやろうかと常に考えていたのだが、まさか自ら死地に飛び込んでいくとは、これが笑わずにいられるかっ!!」


 あぁ、今の俺は産まれて来て今日までの中で一番嬉しいと思える出来事かもしれない。


 これでサーシャもあいつに惑わされる事が無く、やっと目が覚めていかにアイツがクズであるか、そして俺という人間が素晴らしいかという事を理解できるだろう。


 そんな事を思いながら姿が消えていった方角を見つめていると、始めに光が、そのあとに衝撃波とともに熱風が、かと思えば冷風が吹き荒れるではないか。


 まさか、これほどの熱風や冷風に衝撃波を発生させるほどの威力を生み出せる程の魔術をアイツが行使したとでも言うのか?


 それこそ宮廷魔術師の中でも上位五人以下に絞られるのではないか?


 そこまで考えたところで、そういえばダークエルフの女性も一緒にレンブラントの所へと向かっていた事を思い出す。


 なるほど。 これらすべてはレンブラントではなくてダークエルフの女性が行使した魔術なのだろう。


 きっとそうに違いない。


 そう思うのだが、どうしてもアイツではなくダークエルフの女性が行使していたという確信が欲しかった俺は、急いでレンブラントがいるであろう方角へと走り出す。


 そしてようやっとアイツの姿が見える所まで来てみれば、やはりというかなんというか、空に浮かぶレンブラントの側にダークエルフの女性がいるではないか。


 結局レンブラントがスタンピードを珍しく止めに行った理由は、このダークエルフの女性がいるからだったのであろう。

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