第113話 あぁ、ゾクゾクする



 確かに、吹っ切れたおかげでリーシャの大切さを本当の意味で理解できたからこそ生涯を共に過ごしたいと今まで以上に強く思え、告白するに至ったのは確かであるし、いまも顔が熱いと感じてしまう程に真っ赤に染まっているであろうくらいには恥ずかしかったし、正直言うと確かにそれも俺にとって非常に大切な事なのは理解しているのだが、今はそれ以上に『今まで覚えた魔術を全力で行使してみたい』『全力で行使した結果どのような効果や威力になるのか見てみたい』という欲求を抑えきれないのである。


 確かにリーシャにはもう一度しっかりと伝えてあげたいという気持ちも無いもわけではない。 いや勿論持っているのだがそれ以上に魔術を試してみたい欲が強すぎるのである。


 リーシャには後で謝罪も込めてしっかりとプロポーズをしてやろうと思う。 それでお相子とまではいかないかもしれないが、許してほしい。


 そして俺は後でどのようなプロポーズをリーシャにしてあげれば喜んでくれて今日の中途半端な告白を無かった事にしてくれるのだろうか? などと考えながら俺は空高く飛び、魔獣たちが群がっている地上を見下ろす。


「見ろ、魔獣がゴミのようだ」

「やっと追いつけたと思ったら、何訳の分からない事を言っているんですかっ。 そんな事を言ってないで早くこのスタンピードを終わらしてくださいな。 このスタンピードが終わったら、その時はちゃんと告白をしてくれるのでしょう?」

「あ、あぁ。 そうだな」


 そしてリーシャは逃げるようにあの場から離れた俺を追いかけて来て、怒るでもなく、ただ早くスタンピードを終わらせてもう一度告白をして欲しいというだけである。


 本当に、良い女だな。 リーシャは。 


 こんないい女を目の前にして今まで、俺とリーシャとの関係は奴隷のままで良いと告白もしなかったのだから、やはり俺はみんなの言う通り唐変木だったのかもしれない。


「な、なんでしょうか? 私の顔に何かついているのかしら?」

「いや、良い女だなって思っただけだ」

「今頃気が付きましたか。 気づくのが遅すぎると言わざるをえないわね。 ですが今の私はとても機嫌が良いので見逃してあげましょう」

「それはそれは、見逃してくれてありがとう。 さてと、可愛いリーシャが怒り始める一仕事終わらしてきますか」


 そして俺はリーシャと話している間も魔術の術式を0と1の二進法で組み上げていき、上空には淡い緑色をした0と1だけでできた術式が浮かび上がっている。


 あぁ、ゾクゾクする。


 これほどの大規模な魔術など、このような時でないかぎり行使する事さえできなかったであろう。

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