第115話 今まで感じた事のない程の羞恥心


 それ見た事か。 結局アイツは俺に負けた俺以下の存在であり、そんな奴が俺ですら進行を食い止めるだけでやっとというレベルのスタンピードをどうこうできる訳が無かったのである。


 俺の推測はやはり正しかった。


 そう思っていると、よせばいいのにレンブラントの奴が魔術を行使するではないか。


 無詠唱で魔術を行使するのは確かに、それだけの高い技術を持っているともいえるのだが、スタンピードであり詠唱できる状況であるにも関わらず威力の落ちてしまう無詠唱で魔術を行使するとは……。


 結局こういう所がレンブラントのダメな所であり、一生かかってでも俺には勝てない原因でもあるのだろう。


 そう思った次の瞬間、激しい轟音と共にあたり一面が炎に包まれ、そして俺の頬を熱風が焼いて爛れて行くではないか。


 レンブラントが見える場所まで近づいているとはいえ数キロ離れた地点でこれほどの余波を受けてしまう程の高威力の魔術。


 という事は先ほどまでの轟音を轟かせていた魔術は全てレンブラントが行使していたという事ではないか……。 


 しかも無詠唱でこの威力に俺は爛れた頬を回復魔術で直す事すら忘れて呆けてしまう。


 それと共に俺はサーシャから言われ続けては鼻で笑っては『そうあって欲しいという願望だ』と否定し続けて来た『大会というルールに縛られていなければアンタなんか一瞬で殺されている』という言葉を思い出す。


「だから言ったでしょうっ!! 私の師匠であるレンブラント様が世界で一番強い魔術師だってっ!! 私なんかよりも比べ物にならないくらいに強いってっ!!」


 そして、今もなお呆けている俺の近くにいつの間にか例のレンブラントの弟子だという少女が駆けつけて来て、俺に自分の師匠であるレンブラントがいかに凄いか自慢してくるではないか。


 少し前であれば『そんな事などあり得ない』と一蹴することが出来たのだが、先ほどレンブラントが無詠唱で行使した見た事も聞いた事も無い威力の魔術を見てしまっては、とてもではないが以前のように『そんな事などあり得ない』と一蹴する事などできる訳がない……。


 そして一蹴して受け流す事ができないからこそ少女のレンブラント自慢がダイレクトに俺へと突き刺さって行く。


 それと同時に今までイキり腐って俺がいかに帝国で一番強い魔術師であるか、そしていかにレンブラントが雑魚であるかをサーシャに会う度に熱弁していたのだが、レンブラントが先ほど行使した魔術の存在をサーシャが知っていたのならば、その行為がどれ程恥ずかしい行為であったか、今まで感じた事のない程の羞恥心となって俺に襲って来る。

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