第101話 俺に負けた、負け犬ではないか
するとそこでは未だに、俺に指図した上に俺の弟子になる事を拒んだ少女が前線を維持しながら魔獣たちを殲滅しているではないか。
しかも俺の時と違ってほぼ全ての魔獣を少女が食い止めており、それだけではなく、本来であれば俺が担当することになっているエリアよりもさらに広い範囲で魔獣を殲滅しているではないか。
その事が、俺よりも目の前で魔獣を殲滅している少女の方が強いと言う事を証明しているように見えてしまう。
いや、考えないようにしていたのだが、あの少女がここへ来たとき、俺が苦戦していたワイバーンを簡単に倒して見せたその時から既に俺よりも強い事は確定しているようなものではないか。
そして俺はそれから目をそらしていただけであるという事に気付いてしまう。
しかしながら、本当にそれだけであろうか?
俺が目を逸らしていた事は他にもあるのではないか?
そんな気がしてならない。
そんな事を考えていると背後から爆発音とともに熱風が俺を襲うではないか。
何事かと思い後ろを振り替えてみると背後一面が炎の海になっているではないか。
一体背後で何が起きているのか。
もしかしたら魔獣の攻撃によるものなのか。
それさえも分からないのだが、宮廷魔術師の中であれほどの炎を生み出せる魔術を行使できる者など俺の記憶が正しければいない筈である。
という事は魔獣の仕業か、そうでなければ宮廷魔術師ではない誰か。 それこそ国王陛下の懐刀の仕業か。 あり得るとすればそれくらいしか考えられない。
そしてその国王陛下の懐刀が誰であるのか考えた場合、俺の頭の中にとある人物が一名浮かび上がって来る。
その人物の筈かがない。
アイツは実際に俺に負けた、負け犬ではないか。
そう思うのだが、サーシャの話や、目の前にいる少女がいう師匠の話、そしてその師匠の下で教えてもらったからこそ目の前の幼女の実力があるのだとすれば、あり得ない話ではない……。
しかしながら、それでも俺はあいつの筈がないと強く願う。
そんな事を思いながら後方一面に広がっている炎をみていると、空からこちらへ飛んできているドラゴンがいるではないか。
「し、しまったっ!! 挟まれてしまったっ!!」
最悪だ。
本来ドラゴンとは宮廷魔術師総出で討伐して勝てるかどうかというレベルの生物である。
いくら少女がワイバーンを一撃で倒したと言っても流石にドラゴンを一人で相手にすることは出来ないだろう。
そんな事を思っている間もドラゴンはみるみるこちらへ近づいており、そのドラゴンの巨躯を見て俺は全てを諦める。
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