第99話 いくつになっても男子



 とりあえず長生きというアイデンティティーの一つを横からサラッと奪われた形になったリーシャの顔は能面みたいになっているのでそっとしておっこう。


「へー、物知りなんですわね。 ちなみにドラゴンさんはこのスタンピードの影響は無いんですの? こう、一緒に混じって暴れまわりたいとか」

『馬鹿を言うでない。 あいつらはお前たちからすれば確かに魔獣かもしれないが我々からしても異様な存在である。 そうだな、我々からすればグールと人間種ぐらい違うと思ってもらえれば分かりやすいかと思うぞ。 両方とも見た目は同じだが、全く違うであろう? それと同じで我々は魔王に生み出された存在でない為なんら影響もないが、魔王によって生み出された者たちは恐らくただ魔王の大雑把な命令を聞くだけの人形でしかないだろう』

「なるほど、では今下で暴れまわっている魔獣たちはグールのように自分の意志などはなく、ただ本能に近い行動原理で動いているだけに過ぎないという事ですわね。 そしてそれは、グールと違い魔王がその行動原理を操っていると……」

『うむ、そうじゃの』


 そして俺はドラゴンの話を、あたかも初めから知っていたという体で聞き耳を立てる。


 それによって今回のスタンピードが普段定期的に起こるスタンピードとは違って収まる事が無い理由と、何者かによって指揮されているかのように帝国を目指して進んでいる理由が分かった。


「とりあえず下にいる雑魚たちでも一応ここまでの規模ともなると脅威であろうから潰しとくか」


 理由は分かったのだが、だからと言って目の前の危機が去るわけではないのでとりあえず下に見える雑魚だけでも片付ける事にする。


 取り遇えずあたり一面ゴブリンとコボルトといえどもちらほらと冒険者たちも見える為どうやって対処したものかと悩んだ末召喚獣を呼び寄せ、全て任せる事にする。


 俺が使役している魔獣に冒険者は殺すなと命令した上で送り出せば問題はないだろう。


 あるとすれば冒険者たちが俺の使役している魔獣たちを攻撃知る程度であろうし、ぱっと見傷一つすら付けられない程のレベル差がある為問題は無いとみて良いだろう。


 そして俺はドラゴンの背中から地上に向けて計十一もの魔獣を召喚する。


 ちなみに使役している魔獣は、今背中に乗っているドラゴンを合わせて干支で揃えていたりする。


 前世でやってた、モンスターを捕まえて冒険してくゲームでもモンスターの系統などで固めて『〇〇モチーフパーティー』とか作っていたのだが、この年になっても(前世と合わせて四十歳以上とだけ)俺は子供の頃の感覚のままなんだなという事をしみじみ感じてしまう。


 まさにいくつになっても男子はドラゴンのボールが大好きという奴である。

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