第98話 伊達に長く生きているだけの事はある



 そして尚も俺を揶揄ってくるリーシャを無視して俺はレヴィアがいるスタンピード魔獣暴走の最前線へと向かう。


「しかし、スタンピードというのは毎回こんなに大規模なのか?」


 とりあえず俺たちは、魔物の数が無視して進む事ができなくなるくらい増えてきた為急遽、俺がまだクソガキだった頃にテイムしたドラゴンを召喚してその背に乗って下を見るのだが、視界に映る全てが魔物であり、巨大な一つの生き物のようにうねっているのが見える。


 それら魔獣は今のところ一匹一匹はゴブリンやコボルトなどという駆け出しの冒険者でも注意さえしていれば簡単に倒せるような魔獣ばかりなのだが、この数は流石に数日経っても処理しきれていない理由が理解できる。


 それでもまだ前線で宮廷魔術師たちが防いでいるからこそゴブリンやコボルト程度にとどまっているのだろう事を考えると、王都から遠くの町へと避難要請が出るのも納得である。


「こんな大規模なスタンピードは私が今まで生きてきた中では見た事すら無いわね。 それこそ言い伝えではそういう大規模なスタンピードは聞いた事は何度もあるけれども所詮は言い伝えでしかないし、見て来たという長老たちも盛って話している可能性だってあるもの。 どこまで信じて良いものか分からないわね」


 そして俺の問いに数百年は生きている(正確な年齢は何故か教えてくれない)リーシャが、これほどの規模のスタンピードは言い伝えや長老たちからの又聞きした程度であると教えてくれる。


「私たちを乗せてくれているドラゴンさんならば分かるんじゃないかしら? どうですの? ドラゴンさん」

『そうだな、今まで獣型やドラゴンや鳥類型などがかなり少なく、代わりに二足歩行の魔獣が多い傾向から見てまず魔王種、それも二千年前当時の勇者に封印されたイブリースの封印が解かれた結果、彼が生み出した魔獣によって人為的、と言って良いのかどうか疑問ではあるが、とにかくイブリースによって起こされているスタンピードである可能性は高いだろう。 あ奴は何故か人間種を忌み嫌っており、その為なのかあ奴の生み出す魔獣は人間種に酷似した二足歩行の魔獣が多い傾向にある』


 そしてヴィクトリア王女様も背中に乗せてもらっているドラゴンに知っているか聞いてみるとめちゃくちゃ詳しい内容を話してくれるではないか。


 おばあちゃんの知恵ならぬドラゴンの知恵的な、生きている年数が長いからこその生き字引的な、そんな感じなのであろう。


 伊達に長く生きているだけの事はある。


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