第74話 この狸爺めっ!!、


 そして国王陛下は俺の予想と反してすんなりと、俺が国王陛下の誘いを辞退することを受け入れてくれるみたいで内心ホッとする。


「レンブラントが宮廷魔術師に入ってくれないのは残念なのじゃが、代わりにお主を国王直属の魔術師として任命しようかの」

「…………はい?」

「いやぁ、お主に宮廷魔術師を断られたのは非常に残念じゃったのだが、こればかりは無理強いするものじゃないからのお」


 とりあえずこれで俺の愛すべき平穏は守られたと、そう安堵したのもつかの間、国王陛下はとんでもない事をぶっこんで来るではないか。


 この狸爺めっ!!


「いや、あの……それはダグラスではだめなのでしょうか?」


 しかしながら流石に国王陛下直属の魔術師というのは俺には荷が重すぎるので、俺よりも適任者がいるのでとりあえずその適任者の最有力候補であるダグラスを推薦してみる。


「却下じゃの」


 その俺の推薦したダグラスは考える素振りもなく国王陛下から却下されてしまうではないか。


「それは何故か聞いてもよろしいでしょうか」

「簡単な事じゃ。 儂の直属の魔術師故に魔術師としての強さだけではなく、儂との仲の良さも考慮に当然入れておるからのう。 嫌いな者に儂直属の魔術師には当然なって欲しくないし、好きな奴になって欲しいからの」


 そして俺の問いにたいして国王陛下が答えるのだが真っ当すぎて返す言葉が見つからないではないか。


「あぁ、ちなみにお主が不安視しているような事は一切ないから安心してほしい。 当然宮廷魔術師のように激務ではないし、今の仕事である学園の数学教師も止める必要も無い上に、そこへ儂直属の魔術師としての給与が別途支払われると思ってくれてかまわない」

「それは、確かに実に美味しい話ではありますが、勿論それだけでは無いのでしょう」


 こういう良い話ばかり言ってきた場合は大抵蓋を開けてみれば大きなデメリットがあるというのは詐欺師や詐欺行為ギリギリのセールスマンたちの常習手段であるので、しっかりとデメリットを確認しないと流石にはいそうですかとはならない。


「それこそ、俺が国王様直属の魔術師として任命されたとか発表してしまうとか、国王陛下の護衛も一緒にしなければならなくなるとか」

「ふむ、そう思う気持ちも分かるのじゃが、発表してほしくないというのであれば誰が儂の直属の魔術師になったかは伏せるし、儂の護衛として常に近くにいる必要はないぞ? もちろん儂が遠出する場合でも同じように護衛としてついてくる必要はないと誓おう」

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