第73話 ゼロ人となる、


 ようは国王陛下の話を要約すれば『サーシャから前々から凄い奴がいるとは聞いていたが、その者が第四王女でありヴィクトリア王女様を助けた事によって信憑性が増してきた為こうして呼び寄せた』という事なのであおる。


「本当に、なんでサーシャはこうまでして俺を宮廷魔術師にしようとしたがるのか、マジで理解できないんだが……」

「唐変木すぎてサーシャが可哀そうに思えて来るわね」

「流石にこれは言い逃れもできないほどの唐変木よねっ、師匠っ!!」

「これはもう王国の力をもってしても治療は不可能なほどの唐変木ですわっ!!」


 そして思わず思っていた事を呟いてしまったのだが、そんな俺の呟きに対して女性人が好き勝手言ってくるではないか。


 そもそもなんで俺ほどの男性を捕まえて『唐変木』だと、事実と異なる事を言うのか。 これは名誉棄損に当たると俺は思うのだが。


 むしろこの世界では俺ほど女性を口説いたことがある(前世での恋愛ゲームで攻略したキャラクター含む。 ちなみにこれを含まない場合はゼロ人となる)男性はまず他にはいないと自負しているほどのプレイボーイに対して唐変木とは面白い冗談ではないか。


「まぁ、君たちが俺の事をどう思うが今は関係ないからな……」

「効いておりますわね」

「師匠がダメージ受けてる……っ」

「泣くな、男であろうっ!!」


 畜生、なんでこいつらは全力で傷口に塩を縫って来ようとしてくるのか。


 しかしながら今は俺が唐変木かどうかは関係ない事だけは確かなので問いただしたい気持ちを抑えながら国王陛下へ話しかける。


「国王陛下のお気持ちは嬉しいのですが、私のような無名をいきなり宮廷魔術師にしてしまえば他の、宮廷魔術師を目指している者たちに示しがつかないと思いますので今回のお話は辞退したいのですが……」


 そして俺は相手が国王陛下からの申し出であろうともこればかりは辞退させてもらう事にする。


 恐らく数学の教師と比べても給料面では跳ね上がるのであろうが、それ以上にデメリットがあまりにも多すぎると言わざるをえない。


 ただでさえ激務な上に命の危険もあり、そして今回の件に関しては宮廷魔術師を目指す者の他にも努力の末宮廷魔術師になれたような動力からの嫉妬をされてしまうのは火を見るよりも明らかである。


 ただでさえきつい職場なのにも関わらず初手から人間関係が絶望的な職場に、なんで今の生活に満足しているにも関わらず転職しなければならないのか。


「そうか……それは残念じゃの……」

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