第71話 その時は新婚旅行とでも思えば良い、

「はぁ……」


 恐らく国王陛下はダグラスがいた世代であり、その世代の最後の大会で二位という結果を残した俺は、今のダグラスの実力からしても俺の実力は宮廷魔術師と比べても遜色ない実力であると言いたいのであろう。


「しかしながら国王陛下」


 しかしその考え方は今までの大会で負けて来た者たちに対してかなり失礼な言い方ではなかろうか?


 その負けて来た者たちもあの時の俺同様に皆真剣であり、本気で挑んで負けた者たちであろうに、ダグラスに負けたからという理由で俺だけ持ち上げられるのは少し違う気がするので、あの時真剣に戦ってきた者たちの為にも国王陛下の考えに異を唱える事にする。


 それで死罪と言うような暴君ではないし、何らかのペナルティーを与えるような国王陛下ではない事は分かっているのだが、それでも一国の王に対して異を唱えるのには変わりないため、これで今の生活が出来なくなるような事になる場合はリーシャを連れてどこか遠くの国へ逃げるのも良いのかもしれない。


 その時は新婚旅行とでも思えば良いだろう。


「なんじゃ?」

「それは、今まで負けて来た者たちも同じなのではないでしょうか? また、あの時ダグラスと決勝で当たって負けた事が考慮されるのであれば、準決勝でダグラスに負けた者もまた、俺と同じ評価を受けるべきであると思います」

「……ふむ」


 そして俺の考えを包み隠さず国王陛下に伝えると、国王陛下は少しだけ考えた後、俺の問いに答える。


「この儂に進言してくれた事をまずは感謝しよう。 皆儂の顔色を窺うような発言か、明らかに機嫌取り狙いの発言しかせぬから、まだ若いお主からこのように進言してくれるのは嬉しくおもう。 そしてお主の言葉に対する返答なのじゃが、それは違うな、レンブラントよ」

「違うともうしますと?」

「まず一つは大会で勝てなかった者でもその後に開かれる宮廷魔術師選抜試験で宮廷魔術師よりも良い結果を残せたものは、現在の宮廷魔術師の中で悪い結果であった者と入れ替わって宮廷魔術師に熟れるという点じゃ。 お主の言うように高等部最後の大会で負けた者でも才能があるのであればその試験を受ければいい話じゃ。 そしてもう一つはお主が学生生活で負けたのはその最後の大会だけであるという点じゃ。 これほど凄まじい結果を残しているものは数多いる大会で負けて来た者たちの中でもお主だけじゃ。 そして最後に、お主は最後の大会で手加減をしていた……いや、違うの。 大会のルール故に本気を出せなかった。 そうじゃろう?」


 そして国王陛下は最後少しだけ意地悪そうな表情をしながら俺へ聞いてくる。

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