第46話 押し潰されそうな程の重責

「しかしながら思っていた以上に早く終わってしまった…………おいレヴィア、俺の股間を凝視して何顔を赤らめているんだ? まぁ、俺のビックマグナムがこのズボンの中に隠れているのだと思えば凝視してしまうのも致し方無いこ………と……辞めなさいっ!! まだレヴィアには早いからサーマルカメラの原理を利用して服を透視するのは止めなさいっ!!」

「あっ、ひゃっ、す、すみませんっ!!!」


 どうやら俺は【思春期の女子】に決して教えてはいけない禁忌の魔術を習得させてしまったのかもしれないと、そう思うのであった。




 因みに、解散した後サーシャがレヴィアにレンブラントの幼き頃の写真という餌で釣って、このオリジナル魔術を教えてもらっていたのはまた別の話である。





 ここ最近レヴィアさんの魔術のクオリティが目で見て分かる程に向上して行っているのが分かる。


 そして分かってしまう分わたくしは焦りを感じてしまう。


 当たり前だ。


 なんといってもわたくしはあの【絶色】のダグラス様の弟子であるのだから。


 常勝無敗、勝って当たり前、そんなプレッシャーがわたくしの背中にのしかかって来る。


 コレが勝者の重責………。


 以前レヴィアが「連続で大会を優勝するというのは、それはそれで辛いもの」であると言っていたのを思い出す。


 そして成る程、と思う。


 この『勝って当たり前だ』という重責は確かに重た過ぎる。


 しかし、その重責から解放されたレヴィアはというと、まるで水を得た魚の様に生き生きと過ごしているでは無いか。


 しかもそれに伴い今のレヴィアであれば高等部三年の諸先輩方と戦っても同レベル、数ヶ月後にはもしかすればあの生徒会長にすら勝ってしまうのでは無いか? と思ってしまう程の成長具合である。


 もしかしたら、レヴィアの言う通り、レヴィアのお師匠様は世界最強、それこそ【絶色】のダグラス様よりもお強い方なのでは無いか?


 そんな不安が頭を一瞬過り、そんな事があるはずが無いとかぶりを振る。


 あの【絶色】のダグラスより強い者がこの世界に居るはずがないのは疑いようが無い真実では無いか。


 であれば出て来る答えは一つ。


 そこまで考えたわたくしは、その事に気付かないフリをして、心の奥底にしまうと厳重に鍵をかけて思い出さない様にする。


 それでもレヴィアの魔術を見る度に、その鍵を破壊して扉を開け、この答えを引っ張り出そうとしてくる。


 こんな事ならば優勝するんじゃなかった。


 こんな事ならば【絶色】のダグラス様をお師匠様にするんじゃなかった。


 こんな事ならば。


 そこまで考え始めた時、わたくしはハッとして自ら両の頬を両手で一度「パンッ!」と叩く。


「何弱気になっているんですのっ!? わたくしはあの【絶色】のダグラス様唯一の弟子にして中等部三年の部の覇者でもあり公爵家であるランゲージ家の娘、シャルロット・ヴィ・ランゲージなのですわっ!! 弱気になってどうするんですのっ!!」


 そうだ。


 うじうじと悩んだ所で何も解決しないし強くもならない。


 この押し潰されそうな程の重責を振り払う唯一の解決方法は、強くなる事でありうじうじする事では無い。


 そしてわたくしは今まで以上に練習をし始めるのであった。

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