第47話 空が泣いている
◆
「空が泣いている………。成る程、北の方面商業地区の赤色の倉庫か」
放課後、俺はそんなキザなセリフを夕焼け色に染まりかけた空へと向けて言う。
折角異世界に転生したのだ。
凡人であったとしても偶には異世界俺tuee系ごっこをしてもバチは当たらないと俺は思う。
そして俺はキザな表情でタバコの煙をふかし、風に乗せる。
決まった。
正に今の俺はハードボイルドかつ大体の事件は把握しており、普段はだらし無いのだが主人公の危機には颯爽と現れて相手を圧倒的な力の差を見せつけながら蹴散らして行くという、やる時はやる系キャラクターである。
時には主人公に知恵を、時には主人公にヒントを、そして時には主人公のピンチをと様々な場面で主人公を助けるお助けキャラクターである。
そして、中盤で俺は病気で死ぬのだ。
主人公に俺の想いを託して。
そして主人公は気付く。
最初からレンブラントさんが事件を解決すれば良いじゃ無いかと言っていた自分の無責任さと、レンブラントさんの優しさ、そして、受け継いだ意思に。
なんて、まるで中学二年生の様な妄想も偶には良い者である。
妄想が捗り過ぎて次から次へと膨らんで行くではないか。
「北の方面商業地区の赤色の倉庫に何があるんですか?」
「お転婆じゃじゃ馬娘である第四王女、ヴィクトリア様がいつもの様に護衛を巻いて下町をぶらついていた時に、普段からこの様に脱走する癖を知られて念入りに計画を立てていた悪いやつに捕まって王国に身代金が請求されている───」
「そ、そそそそそ、それは大変じゃないですかっ! 何呑気な事を言っているんですお師匠様っ! 早く助けに行きましょうっ!」
「───という妄想を恥ずかしながらしていただけであって何にもないぃぃいいいいいっ!!!?? 戻ってこーーーーーいっ!! レヴィアァァァアアア」
やってしまった。
レヴィアの行動力と思春期×悪退治という化学反応がどういう結果になるのか少し考えれば直ぐに分かる簡単な答えであったと言うのに、先程の恥ずかしいセリフを聞かれたと思って気が動転してしまいそこまで考えが至らなかったっ!!
悔やんでも悔やみきれない。
俺の蓄えでコレから起こるであろうあれやこれやの弁償金払いきれるかなぁ。
兎に角土下座の練習からした方が良いかっ!?
「ご主人様、ご主人様、そんな所でうろちょろしている暇があればレヴィアを追いかけて行った方が良いのでは?」
「それもそうだなっ!! すまんがリーシャもレヴィア捕獲計画を手伝ってくれっ!」
「全く、仕方がないご主人様ですわね。最悪わたくしが養ってあげますから、他人様に迷惑をかけてしまう前に早く行きますわよ」
◆
「しっかし、本当に王族の姫様をこうもあっさりと捕まえる事が出来てしまうとはなぁ」
「本当、バカと言うか何と言うか、王族も平和ボケしているのが分かるわな」
我とした事がこんなチンピラ達に捕まるなどとは、我ながら情けのうて泣きたくなる。
「むぐーっ! むぐーっ!」
「あ?何を言っているか全く分からねーよ。バーーーーカ」
「ムグムグーッ!!!」
「ギャハハハハッ! コレは傑作だぜっ!! このバカ自分の立場というものをどうやら分かっていない様だなっ!」
立場を分かっていないのは其方達であると言うのに、布で口を塞がれてそれすらも言えないのが実に腹立たしい。
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