第35話 きっと気のせいだ

「初めて【絶色】のダグラスさんに会いましたが、何処か気持ち悪いと言いますか………恐ろしい方ですね。よくあんな化け物相手にして平常でいられますね、お師匠様」


 そしてダグラスがこの場から去った後、レヴィアがそんな事を言う。


「言うに事欠いて気持ち悪いとか恐ろしいってお前なぁ、俺からすれば爽やかイケメンの優男で将来安泰優良物件だと思うんだが?」

「申し訳ないのですがご主人………んんっ、レンブラント先生、私もダグラスさんは言い知れぬ不気味さを感じますわ。なんと言いますか………人間の皮を被った何かの様な、周りから見てまともな人間像を演じている様な、そんな雰囲気を感じてしまいます」

「あ、それ分かりますっ!!」


 今コイツ俺の事をわざと『ご主人様』と言いかけて止めたな、とは思うもののその事をレヴィアの前で突っ込むと色々と面倒な事になりそうなのであえてスルーしてリーシャの言葉に耳を傾ける。


 何というか、あれ程の者ですら裏ではこんな扱いなのを見ると流石の俺でもダグラスの事が不憫に思えてくる。


 今でこそ素の自分を出せる様になって来たというのか図太くなってきたというのか、前世ではその他大勢という枠組みから外れない様に生きていた俺からすれば周りから見てまともと思われるように自分を律してその他大勢の典型的な日本人として暮らしていた経験がある俺はダグラスに向けられて放たれた言葉のナイフが見事に突き刺さる。


「どうしたんですの? レンブラント先生。なんだか顔色が優れないようなのですが。体調が優れないようでしたら私の膝を貸してあげるので枕代わりにして少し横になってみてはいかがですか?」

「いや、体調というか主に精神的な問題だから問題ない」

「それはそれで問題だとは思うのですけれども、レンブラント先生は体調不良でも倒れるまで我慢するきらいがあるので、体調が悪い時は我慢せずちゃんと申告してくださいね」

「あぁ、分かった分かった。本当に体調は悪くないから、デコもくっつけなくていいから」


 そしてそうリーシャを押しのけるのだが、押しのけるのはレヴィアの前だからというのもあるが、結局の所照れ隠しでもある。


 何だかんだで愛しの奴隷様に心配されるのは、これはこれで嬉しいのだが、流石に知られると恥ずかしいお年頃なのだから察してほしい。


 察している上で俺の反応見たさにあえてやっている様にも思えるのだが、きっと気のせいだ。


「先生方は相思相愛って感じで、なんだか羨ましいです」

「そういうんじゃないからっ。あと、何度でも言うが学園では俺とリーシャの事は頼むから秘密にしてくれよっ? もしばれたら殺されかねないから」

「その場合は私が守ってあげますから大丈夫だと言っているではないですか。ちゃんと私はレンブラント先生の奴隷だとむぐむぐむぐむぐっ!?」

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