第36話 宮廷魔術師達の試合

 そして、そんな程度で揺れ動く俺の男心を弄ぶかのように愛しの奴隷様であるリーシャはレヴィアの前で俺とリーシャとの関係を吐こうとしたているのが窺えたため慌てて口を塞いだのだが寸前の所で間に合わなかった為嫌な汗が全身から噴き出して来る。


 そもそもこの愛しの奴隷様であるリーシャは俺がその小さくて愛くるしい口を塞ごうと動き出した瞬間早口になった気がしないでも無いのだが、きっとこれも気のせいだと思う事にする。


 そんな事よりも今はレヴィアに先ほどの内容が聞かれているかどうなのかが重要である。


「全く、そんな冗談を言い合えるくらいの仲なのならば別にバラしても別段問題はないと思うのですけれど、色恋の問題は犬も食わないと言いますのでこの件に関しては私からとやかく言うつもりはありません。ただ、あの様に目の前でイチャイチャされると何故か胸がモヤモヤするので、できれば私がいない所でイチャイチャして頂きたいですね」

「あらあらあらっ!? まあまあまあっ!! あらやだ初恋かしら? 可愛いですわねっ!! でも大丈夫ですわ。私とレンブラント先生はドレむぐむぐむぐむぐっ!!」


 愛しの奴隷様は何だかもともと口は滑りやすい方なのだがここ最近は特に酷い気がするので気が気じゃない。


 そもそもの話、例え主従関係でなく恋人関係だとして、それを公表したとて俺がリーシャに思いを寄せる数多の者達により寝静まった深夜亡き者にされてしまう事には変わりないだろう。


 愛しの奴隷様は俺を守ってあげるとは言ってくれるのだが、一日二十四時間常に俺の傍にいる訳でも無いので難しい話であろう。


 しかしながら、何はともあれレヴィアはリーシャの奴隷発言を単なる冗談であると勘違いしてくれたみたいでほっと胸を撫でおろすが、それと同時に愛しの奴隷様であるリーシャの口がいつ滑るのか気を張る。


 あちらを立てればここちらが立たずとは良く言ったものだ。


「はいはい、準備が整ったみたいだからそろそろ宮廷魔術師同士の試合が始まるぞ。試合を観る事だけに集中しろ。今までの一般の部とは戦い方がガラッと変わると思うから宮廷魔術師の部と一般の部では戦い方のどこが、どのように、そして何故変わったのか自分なりに分析してみる様に」

「わ、分かりましたっ。お師匠様っ!!」


 宮廷魔術師であろうと一般魔術師であろうと国の重要戦力には変わりなく、その者達の手の内が晒されてしまう試合を観戦できる者は少ないものの、それでも観客席に今までと違う緊張感が漂い始める。


 そして、遂に宮廷魔術師達の試合が始まる。


 宮廷魔術師達の試合は一般の部と違い、一気に地味になるのが一目見ただけで分かる。


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