第7話 腹立たしく感じる
静かに暮らしたいというありふれた日常、ありふれた幸せがどんどんと遠ざかって行く錯覚まで感じるレベルである。
何回も言うが実にうざいしめんどくさい限りである。
「あーはいはい。分かった分かった。それで俺は何をすれば良いんだ? 一回くらいなら子供の遊びに付き合ってやるよ」
「こっ、子供の遊び……良いでしょう。そんな事を言っていられるのも今のうちですから存分に粋がってなさい。勝負は当然魔闘術で勝負よ。ルールは魔術師学園高等部のルールで良いかしら?」
「あーはいはい。分かった分かった。ちゃっちゃと終わらせてちゃっちゃと帰ろうぜ」
件の彼女は魔闘術が得意なのかやたらと自信満々でつかかって来るが、俺からすれば勝とうが負けようが一回やって終わりである。
ならば早く終わらして先程中途半端に終わってしまった大人のスポーツの続きでストレスを発散したいのである。
無駄口叩く時間があれば早く闘技場まで行きこの強制イベントを終わらせたい。
しかし件の彼女はそんな俺の態度が自分を見下していると思っているのか自身のプライドを煽られ「グヌヌヌヌ」と苛立ちを露わにして今すぐにでも飛びかかって来そうである。
そんな彼女をなんとか年の功で手綱を握り闘技場まで連れて来ると懐かしい雰囲気に吐きそうになると同時に、何だって俺が挫折し凡人だと気付かされた思い出の場所に行かなきゃならんのだと改めて腹をたてる。
前世で言う所の東京ドーム一個分と言った感じの闘技場、床は土でできており屋根は無い。
この闘技場独特の土臭さも、雰囲気も、空気の流れも、五感で感じるその全てが腹立たしく感じる。
この腹立たしさは結局の所嫉妬という部分から来ている事が分かるからこそ余計に腹が立つ。
「準備は良いかしら」
「いつでも」
「っ……この私を目に前にして随分と余裕ね……では、レヴィア・ド・ランゲージ、行きますっ!!」
レヴィア・ド・ランゲージと名乗った少女は自ら試合開始の合図を上げると無詠唱にて炎の魔術を繰り出し、それと並行して一気に駆けて行く。
その手には真っ赤な刀に似た片刃剣をいつの間にか握られており、自分から見ればまだまだ拙いものの刀という武器そのものがなく、またこの国で主流は両刃剣であり存在自体が珍しい片刃剣であるにもかかわらずよくここまで仕上げたものだと感心する。
もし自己流であるならば正に天才であろう。
剣筋も悪くなく、足さばきも悪くない。
しかし、それらはあくまでも両刃剣の立ち回りであり切る動作ではないのが惜しい。
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