第6話 実にめんどくせぇ

 しかしながら小娘はある意味核心をついた質問を投げかけてくるのだが、まだ完全に事に及んでいた事がバレたわけではない可能性も秘めている実に嫌らしい質問だと心の中で悪態を吐く。


「イチャイチャしているところを見られちゃったわね。じゃ、私はお暇しますわ。それと、この事は皆んなには内緒よ?」


 そんな状況下でリーシャはさもそうする事が当然であるかの様に退出して行く。


 奴隷としての意識が低いと思わざるをえ無いので今夜はお仕置きであると頭のメモ帳に力強く記入しておく。


「まさか、リーシャ先生と恋人同士だったなんて………」

「正確には恋人では無いんだがな、まあ似た様なものだな」

「それはそうとリーシャ先生とイチャイチャする少し前に実験か何かしました? なんか変な匂いがするのですが……」

「あ、ああ。実験ね…実験。シタンジャナイカナー……」


 この小娘がこの美貌を持ちながら今まで処女を守って来た事を褒めてやりたい限りだ。


 なんだったらお小遣いも上げてもいい。


 何故ならその変な匂いとは男女の事情の香りなのだから。


 そして間違いなく小娘が言う『イチャイチャ』とリーシャが言う『イチャイチャ』の意味は違う事も窺えてくるというものだ。


「ふーん……何の実験か気になるのだけれど、今はいいわ。朝の続きよ。貴方がすっとぼけるのならばそれも良いでしょう。しかしながらそれでは私が納得しませんので一度私と試合をして頂けませんか? 勿論貴方が勝てばもう付きまとわないし正体を詮索したりしない。でも逆に私が勝てば正体を明かして頂きましょう」

「………実にめんどくせぇ」


 それはまごう事なき本心から思わず出てしまった言葉であった。


 今更青春真っ盛りの様な事を言われましても、俺からしてみればタバコ一本くれると言ってくれる方がまだ言う事を聞いてあげたくなるというものである。


 こんな勝負に本気になる自分も、全力を出せる様に身体を鍛えている自分も、全てあの日に置いて来たのだから今更そこまで取りに行けと言われてる気がして小娘一人を相手にする事が心底めんどくさく思えた。


「め、めんどくさいって貴方っ!! 恥を知りなさいっ!!」


 そして俺のやる気の無い言葉が聞こえたのか件の少女は逆に俄然やる気満々といった感じで息巻いて来る。


 最早その無駄なやる気だけであてられそうである。


 実際そう思うと少し吐きそうになるのだから人体は不思議である。


 そして目の前の小娘の頭もどういう思考回路をしているのか不思議である。


 頭の中を開けば「青春」の二文字で埋まってそうなのだから恐ろしい。


 でもまあ、思春期のガキはそれぐらいが丁度いいとも思うのだけれどもそれを俺に向けないで貰いたい限りである。

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