僕はただ カリフラワーと 踊ってる

@_73737883

第1話

僕の叔母だという知らない人の車の窓から見える知らない街の景色はとても無機質で

6月なのに寒々としていてまるでこの町で過ごすであろう日々を予見しているかのようだった

国道沿いにチェーン店がぼんやりと並ぶような、どこにでもある地方中枢都市に住んでいる叔母の家に引き取られることが決まった時

僕はまだ小学5年生になったばかりだった。

僕の内向的な性格も加担したが、みんなはずっとこの町で暮らしてきていて、途中から入ってきた僕が友達を作るのは難しかった。


僕の孤独に寄り添ってくれるのは本、ゲーム、漫画といった類だけだった、そしてそれが僕の孤独を助長していた。

引っ越してすぐの7月、家の近くの国道沿いの再開発で、そこにファミリーレストランと本屋ができた、

友達がいなかった僕は逃げ込むように本屋に通うようになった



「ねえ、さとうくんだよね?」

その日も僕は本屋にいて、映画の宣伝に気を取られていると、突然女の子から話しかけられた。

「え、  うん、、、」

慌てた僕はしどろもどろな返事をする。知っている子だ。

クラスで一番背が高く、転校初日に自己紹介で壇上に立った時、そこからみえる彼女だけがひときわ輝いていて

彼女がこの町にいることに強烈な違和感を感じたことを覚えている。

彼女のような真夏のひまわり畑が似合う人間が、せいぜい深海がお似合いの僕みたいな人間が見えるのかと驚いた。

「もうここに慣れた?」

僕が首を振ると、彼女は嬉しそうな顔で「わたしも!」という。

小学四年生の時に父親の仕事の都合で東京から引っ越してきたらしい

それから彼女は僕に、この町が退屈だという話や、同級生が子供に見えるという話、好きな雑誌の話、

退屈になったらここに来ることなどを話してくれた。

彼女はここからすぐ近くの新興住宅地に住んでいるらしく、

本屋で僕が彼女に見つかるたびに彼女は僕に話しかけてきた、そして、ぼくたちは決まって彼女の家の近くの

宅地開発によって切り開かれた山の小高い丘の上に行き、そこで座って話すようになった

真っ白な売り家と、きれいな空き地ばかりが目立つような人工的な場所から見る僕たちの町はまるで、

大昔に絶滅した巨大な生物の死骸の上に作られているような不自然さと、死への近さがあり、その上を通る高速道路だけが、

それから逃れている唯一の存在のように感じた。

そして僕たちはこの町への悪口を通じて、仲を深めていった。

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