最終話:聖女

「シェルタリア・ガードナー、貴殿をアニマビスト王国の聖女として認めます!」

「「シェルタリアさーん! 本当にありがとうー!」」


 今、私は王宮のバルコニーにいる。

 眼下には大勢の国民が集まっていた。

 ドラゴンの襲来を回避した功績を認められ、アニマビスト王国の聖女として称えられることになったのだ。

 国を挙げてのパレードが開かれていた。


「シェルタリアさん、聖女の証の首飾りです。どうぞ、お受け取り下さい」

「ありがとうございます、アルシンカ様。謹んでお受けいたします」


 アルシンカ様がゆっくりと首飾りをかけてくれる。

 国の紋章が刻まれた由緒あるネックレスだ。

 古来、聖女として認めた者にだけ贈られてきた。


「シェルタリアちゃーん! よく似合っているよー!」

「シェルタリアー! お前は本当によくやってくれた!」


 国民の中でも、ベティとストロングさん、“擁護の館”のメンバーが一番大きく手を振ってくれていた。


「シェルタリアさん、これからは“擁護の館”と王宮を行き来する生活になると思いますが、私たちもできる限りの援助はさせていただきます」

「アルシンカ様……」


 私とアルシンカ様は硬い握手を交わす。

 “擁護の館”も活躍が認められ、国が援助する正式なギルドとなった。

 これからはアニマビスト王国も一緒になって、モンスター保護活動を大きくしていくことになるだろう。


『シェルタリアはみんなの聖女になったんだね。僕も鼻が高いよ』


 肩からライムがぴょこりと顔を出した。

 得意げな顔で辺りを見ている。


『お前を慕ってくれる人がたくさんいて良かったな。素直に俺も嬉しいぞ』


 傍らにはヘブンさんがくっついていた。

 ここには私を信頼してくれる仲間がいた。


「ありがとう、これもみんなのおかげよ」


 彼らを見ていると、今までの出来事が思い出された。

 気色悪いスキルと追放されたこと、ライムと出会ったこと、ヘブンさんが心を開いてくれたこと、モンスターたちと語らってきたこと……。

 言葉では言い表せないほど、色々なことがあった。

 

――私にできるのはモンスターと会話するという、本当に取るに足らないこと。


 でも、自分のやっていることは間違っていなかったのだ。

 ライムとヘブンさんに囲まれながら、私は嬉しくて泣いていた。

 まだまだやることはたくさんある。

 ドラゴンたちとの約束も果たさなければならない。


「これからもよろしくね、二人とも」

『何があっても、僕たちはシェルタリアの味方だからね』

『俺たちはずっとお前と一緒だ』

 

 この先、どんな危機が訪れるかわからない。

 でも、心配はいらない。

 この子たちがいるのだから。

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こちら、モンスター保護ギルド!~モンスターの言葉がわかるなど気色悪いと追放された伯爵令嬢ですが、傷ついた子たちを保護したらモフモフしてきます。忠告を聞かなかった実家はモンスターに襲われ破滅しました~ 青空あかな @suosuo

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