第2話 ちょっとした変化
「もう!お兄ちゃん遅い!」
「珍しいね、トモが私より遅いなんて」
玄関を出ると、2人の少女が待っていた。
金剛
「悪い。ちょっと調べものしてて遅れた。美紅も今日早いの珍しいな」
「今日は、部活休みだったんだよ。藍も生徒会が無かったから一緒に帰ってきたの」
「1年生は先に帰って良いよ~って言われたんだ」
オレの右隣に藍が、左隣に美紅と両手に花の状態で近くのスーパーに行く。オレら3人が中学生になったときに、両親の海外長期出張が決まった。そして美紅の両親も夜勤が多く、お互い子どもだけになるので、ほぼ毎日夜飯を一緒に買い物、料理、食事をしている。
「やっと夏休みだよ。まあ部活はあるんやけどさ~」
「私も生徒会で何回か学校行かないとだし」
「大変だな~お前ら」
「トモはヒキニートになるんでしょ」
「あ、そうだお兄ちゃん。ハント手伝ってよ。欲しい素材が全然出らんくて、周回めんどい」
「いやまずは、宿題を片付けてからや」
「意外とそういうのはちゃんとしてるよね、トモ」
「こういうのは先に終わらせてからいっぱい遊ぶんや!」
「じゃあ美紅とお兄ちゃんが終わってから、始めようかな~」
「ちょっと藍!そういうのは良くないわよ」
スーパー手前スクランブル交差点の信号待ち。何気なく辺りを見渡すと、対角線上の向かい側に見知った女子達がいた。
たしか……オレと同じクラスでカースト上位の陽キャ集団だ。いつも4人組で遊んでいる。オレの記憶が正しければ、右から『ボクっ娘』『マイペース』『無』『委員長』だったかな?そんな認識。
4人ともカースト上位なだけあって、藍にも美紅にも負けず容姿も良い。そんな中でも、1人だけ群を抜いて目立つ存在がいる。それが、
「トモ?……あ!あれ委員長たちじゃん!おーい!」
「ホントだ!やっほー!」
オレの視線の先を見た美紅が彼女たちを呼び、藍が大きく手を振る。向こうもこっちの存在に気づいたのか手を振り返している。
信号が青になり、スーパーの方へ歩き出す。横断歩道の真ん中あたりで、藍と美紅が走り出した。彼女たちもスーパーの方に向かって歩いてたので合流しに行った。
「先行っとくぞ!」
「「はーい!」」
実のところ、彼女たちとはこの交差点で何度も会っている。最初はお互い、同じ制服の奴がいるくらいの認識だったと思う。けれど、週一で会っていれば向こうも話しかけてくる。そこから何度も話しているうちに仲良くなったらしい。
なんで『らしい』という言い回しかというと、オレは彼女たちとはあまり話したことがないからだ。家族や美紅は別だが、人付き合いが苦手だ。
「さて、今日はカレーだったな」
すぐ合流すると思うから、2人に見えやすいように自動ドア付近の野菜コーナーから回るか。じゃがいもと人参と、他は何がいったかな。お、じゃがいもじゃん。どれどれ~。
「お兄ちゃん!それ横の方傷ついてますよ」
「これなんか良いんじゃない?トモさん」
「そうか?どれどれ……ん?」
喋り方に違和感を覚えた。藍が敬語で、美紅がさんづけ。声のした方を見ると、声の正体に驚いた。
「え!?水無瀬さん!」
「ボクもいるよお兄ちゃん!」
「い、今井さんも!……あれ?藍と美紅は?」
「ちゃんといるよ!」
後ろから全員がニヤニヤしながらついてきていた。
「何してん……るんですか?」
びっくりしたが、とりあえず話しかけてきた2人に質問した。
「いや~ちょっとじゃんけんで負けちゃってね~」
「え!?」
「そう。じゃんけんで負けた私と
「あ、そういう」
良かった~。ジャン負けの罰ゲームがオレに話しかけることかと思った。軽く死ねたわ~。
「ていうかお兄ちゃん、最初気づいてなかったよね?」
「だよね~。なんか自然だったていうか――――」
「き、気のせいだよ。ちょっと具材の確認をしててね?」
声じゃなく喋り方で気づいたのは、黙っとこ。
それから4人と別れ、カレーの具材を買い、家に帰って食べた。それにしても、あの4人が接触してきたのは驚いた。6人の美少女に囲まれるのは心臓に悪い。こんな日は、ゲームして落ち着こう。コマさんは……また明日で良いか。
今日のちょっとした変化は、何か始まる前兆なのでは?と思ったが、そんな漫画みたいなことはないだろうと気にせずに、オレはそのまま眠りについた。
ネトモなキミは身近にいる ゐふ @hiyokko27
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