第105話 「わ」

 私は京都人です。

 生まれも育ちも。今も。


 京都といって皆さんすぐ思い浮かべられるのは京都市の風景だと思います。

 御所ごしょとか、京極きょうごく繁華街はんかがいとか。嵐山あらしやまなど、観光地ももちろん多いです。


 京都市といっても雪深い北区の山奥から、酒処さけどころで有名な南の伏見ふしみ「区」も京都市。実は、京都市はかなり広い。

 京都府って、さらに南北にも長いんです。京都市の、特にど真ん中住んでいる昔からの人は今でも、しゃれっ気ありとはいえ、「京都に海はない」といいます。もちろん、舟屋ふなやで有名な伊根町いねちょう、昔から軍港としても名が知れた舞鶴まいづる天橋立あまのはしだてだって、海に面した北の地も京都府です。


 父母は京都市の生まれです。

 特に父は東山ひがしやま区、清水寺きよみずでら祇園ぎおんが有名な。

 父方の祖母は祇園で三味線のおっしょさんだったらしいです。

 明治生まれ、苦労も多かったようで詳しくは話してもらえないまま亡くなりましたが。


 さて、本題。


 女性の語尾で「わ」って、最近はいわないんですよね?


 小説を書く時、女性の話し言葉をどうするかは結構悩みどころです。


 関西に住んでいればもちろん、自分自身も、また相手も、話すのは関西弁、京都弁。

いわへんし」

 は、京都人が他へ行ったとき、自己紹介で一番にいうだろう笑い話ですが、先にいったようにうちの祖母はその「花街かがいことば(芸舞妓げいまいこさんが話す言葉)」で生まれ育っていますので、「どす」「おす」といっていたんですよね。

 小学生当時、友達がうちに遊びに来て祖母が出るとそれだったので「おまえんとこは(どすを)いってたやんけ」は懐かしい話として出てきます。


 詳しく言い出すときりがありませんが、京都弁と一口にいっても「花街ことば」「だんさんことば」、さらに先にもいったように京都は広いですから南でも北でも微妙に違います。


 それでも「どす」はともかく、京都を含む関西では、

「いわへんわ」

「知らんわ」

殺生せっしょうやわあ」

 みたいに、今でも「わ」は語尾に着くんです。男女も関係なく。


 方言周圏論ほうげんしゅうけんろんというのがありまして。

 詳しくは本題からそれる上に文字数も多くなるのではぶきますが(そればっかり!)、京ことば(昔の都の言葉)は地方へ行くほど古い言葉のなかに残っているという。その名残なごりなのかなと、私は「わ」に思うわけですが、それも方言そのものが消えつつある今はさてどうなのでしょうか?


 私の作品のなかで関西弁をしゃべるキャラクター、京ことばのキャラクターは本当にやりやすい。そりゃあ、いつも話す言葉を使えばいいわけですから。


 最近だと「モニかな」のケルス。楽しいといえるほど、その言葉遣いはなじみ深かったです。2023年夏に公式自主企画「ご当地怪談」に寄せて書いた時、大阪や京都を舞台にして言葉をそれにした時もやりやすかったです。


 去年(2023年)話題になった「知らんけど」。それも普通に使いますから、関西人全般。ウケ狙いもなく。知らんけど。


 これが標準語となるとそうはいかない。普段使わないですから。

 マンガとかドラマとか、そのなかでは標準語ですが、そこの言葉が本当に普段使われているものか分からない。これが困る。


 丁寧語の「ですます」で話す場面ならいいんですけど、親しい人同士でそれはないですよね。

 ギャル語、サブカル語、どこまで使うか? どこまでの世代に通じるか?

 そうなってくると本当に分からなくなってきます。


 会話に違和感あると、お話そのものがおもしろくなくなる。

 話し言葉一つにも頭を悩ます。

 小説書くって、けっこう大変。


 そんなどうでもいい話。

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