第81話 庶民の暮らし

 先日、久しぶりに大きな本屋に行ってきまして。


 いろいろ物色しているなか、ふと目に入った俵万智さんの歌集。

 かの有名な。

 ぱらぱらとみて見れば……。

 なるほど、こういうこと!

 逆立ちしたって、私には無理だわ。

 切々と訴えかけてくる、じんわりと心に響く。

 それを現代語で。

 抽象的な表現は決して分かりやすいとは言えないのだけれど、なのに「分かる、分かる」とうなずいてしまう。読み返すたび、理解が進む。

 連作だと物語になっていて、だんだんとその世界に入っていける。

 ああ、こういうものか。

 多分、今回のコンテストでも「停滞しているその世界を打ち破ってくれる」ものを求められているのでしょうね。


 私には無理。

 だから、ただただ、短歌も俳句も、自分のやりたいようにやって楽しみます!


 と、これはつかみのお話。


 本題。


 本屋に行って何を探していたのかといえば、江戸時代の庶民の暮らしがわかる本。

 古文書の解読なんて高等技術、高卒の私には出来やしない。

 なので、そんな私でも分かるような手軽な読み物を。

 最新の研究がいいので、図書館よりも本屋のほうがいいわけ。


 わりと新書や文庫、雑学系に求めているものがあるんですけど、磯田道史先生のエッセイとか、まさにドンピシャ! ですよね。


 江戸時代のことって、戦国もそうですけど、有名な武将の活躍とか、秘話とか、合戦の模様とか、いわば派手なものはよくあります。


 違う、そうじゃない。


 私が求めるのはあくまでも、その時代の庶民の暮らし。


 英雄といえるような人たちだけがその時代に生きたわけではない。

 むしろ圧倒的多くは庶民。当たり前の話ですが。戦乱でも太平でも、ひっそりと庶民がいかなる暮らしをしていたのか、それが知りたいのです。

 江戸の暮らしだけではない、地方の暮らしは?

 みやこ、京都はその時代どんな風だったのか?

 イメージでは武士が威張り散らし、庶民は圧政、苛斂誅求かれんちゅうきゅう(重税)に苦しむ、そんな江戸時代。それは本当か?


 案外、ないんですよねえ。


 ここらへん、私が民俗学とか、昔話とかが好きなこととも関係しています。


 私、仏教芸術にはあまり興味ありません。

 文化、芸術にしても、よく分からないですから。

 でも、それが、千年も前のものが、今にも受け継がれている!

 その心をこそ、私はすごいと感心し、重文級や国宝級の仏像や建物には敬服すること甚だしいのです。

 戦乱であったり、例えば明治維新の間違った(江戸幕府を否定しないと、俗にいう官軍は庶民に対して自分たちを正当化できなかったわけですし)西洋礼賛での廃仏毀釈であったり。数多の苦難を乗り越えて、一時は打ち捨てられていたことさえあろうとも、今の時代にまで、時に千年の歴史をよみがえらせてくれる。

 芸術的な技法とか、センスとか、それより何より、信仰でも、人がそれを千年も伝えたという事実、それが古美術には込められている、それを感じ取れるのが好きです。


 古民具。

 いいですね!

 貴重なんだけど、でも決して高いお金では取引されないっていうのところも大好物です!

 崇め奉るためのものではない、日用品だからこその良さ。

 人が使うことを前提にしているからこその丁寧な作りと美しさ。

 これ、どうやって使っていたんだろうなあ。

 日用品の使い勝手を探るのもまた乙なもの。


 物ならばわりと残っているんですけど、でも庶民の生きた証を伝える記録、古文書なんかは埋もれがち。先にも言ったような、武将とか、偉人とか、そんな派手なものの影に。

 そんな庶民の暮らしにも、今を生きる我々へのヒントとなるべきものは多いはずなのに。


 そんな「庶民の暮らし」を私の作品に反映させたい。


 と、目的が崇高(?!)とまとめながらも、でもやっぱり本音は……。


 純粋に庶民の暮らしこそおもしろいから

 生の活力がみなぎっている。

 だから、それが伝わってくる本を探すんですけどね。


 そんなどうでもいい話。

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