夢の続き?

JOY POP

第1話  此の思いが消えるなら…。

 忘れない内に書き留めて置こう。

 前回見た時には書き留める物が無く、書き留める事が出来ずに居た。


 今回はPCが傍に有り、書き留める事が出来る。

 此処は何処かの作業場?、工場の一角?、なのだろうか…。


 白い壁、幾つものテーブル、何故か場違いなシングルアームの作業用ロボット。


 何を加工?、組み立て?、してるのか判らない、作業用ロボットも動いていない。

 手作業で組む?、若しくは加工して居るのだからロボットなど不要な筈。


 アーム迄含めた身の丈は2m程、台座からボディ上端までは1.2m位か、幅はボディの最大の所で同じく1.2m位。


 冷静に判断すれば其れが無用な長物で在る事は解る筈だが、登場人物の中の一人で在る俺は全く疑問に思わないらしい、登場人物は6人の様だ…。


 何か判らぬ物を作って居る女性の作業員、皆私服で作業してる、只作業するには不適当な服ばかり身に纏って居る、年上の一人はオフィス作業か外回りの営業でもする様なスーツ姿で在る。


 もう一人はGパンにトレーナー、可愛いエプロンをしている、猫の足跡、三毛何だろうか顔の部分だけが張り付けられて居た、此処で作業するのには明らかに場違いだ。


 もう一人は是こそ、嫌此れが一番場違いだ、何故かパジャマを着て作業してる、薄いピンクで所狭しと、白、黒、ブチ、三毛これもまた猫のプリントがされて居た。


 残る最後の一人、此れもまた場違い如何見てもJK、然もブレザー私立校の制服…。

 此の中で一番小柄な女性、皆黙々と作業している。


 俺は何をしているのだろ、何かしらの作業すらしていない、もう一度見渡し其処で気が付く、作業用ロボットのボディの外板が外れてる、如何も其のロボットのメンテナスをして居る様だ、だから彼女たちは黙々と手作業で何かしらを作って居る様なのだ。


 想い出した様に作業に取り掛かる、そう此れを仕上げないと彼女たちはずっと手作業を続ける羽目に為る、だからだろう彼女たちの目が冷たいのは、サッサッと仕事しろと言わんばかりに。


 作業に取り掛かる、如何も位置検出の状態がメイン基板にフィードバックされてい無い様だ、分解して調整するよりは交換した方が手っ取り早い、作業車へ戻りサーボを手にして交換作業に取り掛かる、小一時間ほど経っただろうか、負荷が掛かり続けたベアリングも変えた方が良さそうだが、其れは依頼主クライアントに報告し指示を待たないといけないし、次回の定期メンテナンス時迄は十分耐えるだろうから、今は一刻も彼女たち作業員を手作業から解放して上げないと…。


 突然大きな音が其の空間に響き渡る、ガラスの割れる音、入り口のサッシのアルミが壊れる音、其れと女性たちが発する大きな悲鳴も含まれる。


 音の方向を見ると何故か影が落ち顔が見得ない男が居た、簡易的なアシスト付きのボディスーツらしき物を付けている様で、パイプフレームむき出しで関節部にアシストモーターが見える、腕、脚、腰の外側に装着するタイプ、アシスト機能のみだから装着された者の意思に従うだけ。

 アシモフ氏の意思など介在しない、ロボット三原則が通用しない物で在る。


 其の者の手には何か良く見えぬが、武器に成り得る様な物が握られて居る、縮こまり何も出来ずに居る者達に逃げる様に合図する、だが其の侵入者に対し作業用のロボットを盾にする俺の後ろに全ての者が集まって来る、此処に居たんじゃ危害が及ぶ直ぐに外に逃げないと…。


 仁王立ちする其の者は未だ一言も発して居ない、只手に持つ物から無気味なエアモーターの音だけが響いて居る、聞き覚えの有るモーター音、確かに有れは使い方次第では、充分武器に成り得る殺傷能力が有る、使いかたを間違えなければだが…。


 俺の後ろに集まる者達に、逃げる様に促す、直ぐに外に出る様に、俺とロボットの陰に成る其の後ろに換気用の小さな小窓が有る、俺の体格じゃ抜けられ無いが女性ならば抜けられる筈だ。


 相手が未だ動きも言葉も発して居ないが敵対する者に間違い無いだろう、でなければ玄関を蹴破って入って来ないだろう、振り向き脱出する様に指示を出す、皆一斉に首を振る、恐いのは解るが、如何出るか判らぬ相手に守り切れる訳が無い、然も複数居られたんでは…。


 何故か奴は未だ動かない、逃がす時間でも与えているつもりか、其れとも猫が獲物を甚振る様に飛び出して来るのを待って居るのか?、何方にしても良い性格してやがる。


 此のチャンスを見逃すな有効に使え、後ろに居る女性たちに告げる。

「今しか無いから、直ぐに此処を離れて外に出ろ!」

「恐いから無理、一緒に逃げて!」

 一様に示し合わせた様な声が返って来る。


「良いから行くんだ、今の内に多分そんなに時間は残されては居ないから!」

 余程怖かったと見え、泣きだして居た…。


 一人、又一人と離れ消えて行った、其の一人ずつに声を掛けられた、意味が解らなかった…。

「さ~てもう良いかな?、覚悟は決まったかい?」


 テスト端子に動作確認用のスティックのケーブルを差し込んだ…。

「何の心算だ、こんな処を襲って何がしたい?」

「いや、別に此処じゃ無くても良かったんだ、御前が居る所なら!」

「俺が狙いなら無関係の物を巻き込むな!」

「いや其れはスパイスだからさ~。」

「悪趣味な奴だな御前!」

「イヤ~、御前を追い込むために必要なんだよな~。」

「何がしたいんだよ!」

「そうだね、簡単に言うと御前に死んで欲しいだけだよ。」

「それじゃ俺が相手をすれば良いだけかよ?」

「そう言う事だね。」

 切り札は最期迄取って置かないと、外板を開けた侭だから動かないと思って呉れよ!。


 一気に間を詰めて来た、動かぬと思い込ませる為にも、最後迄動かさない、ロボットのボディとアームを盾に何とか交わす、此の時間で出来るだけ遠くに逃げて欲しい、此奴の気が変って後を追わないとも限らない、無関係な者を巻き込む訳に行かない、だから少しでも遠く安全な所まで逃げて欲しい、安全な所に匿って貰える様に…。


 俺の手には長尺のマイナスドライバーと電工ナイフ、此れ位しか武器に成りそうな物は持ち合わせて居ない、交して居く其奴が周りの段ボールを蹴り倒して行く、其の中に先程迄彼女たちが作って居た物も含まれて居た、一面に散らばる其の製品達、転がったのは赤ん坊用の玩具、口に入れても大丈夫な物達、俺は盾を中心の左右にだけ動いて居た摺足に近かった、でも奴は…。


 其の幾つかがステップを踏む様に動いて居た奴の脚を捉えて呉れた、バランスを崩した、一見武器の様に振り回して居た電工ナイフを投げ捨て、動作確認用のスティックに持ち替える。


 アームが動き出す、奴を狙い捉えたのは奴の背中、正確に捉えたキチッと修理出来てたな良かった、狙いは正確に対象物を捉えた、そしてトルクを掛けて行く…。


 <グシャッ!、バキッ!、ボキッ!>と乾いた音が作業場内に響い居ている。


 何故乾いた音が響くか?、俺は奴を狙った確かに狙った、でも正確には奴が背負ってるアシストユニットの本体、制御系のシステムとパワーパック、俺が手に掛けた機械に人殺しはさせたく無い、正確に潰して呉れてアシストが止まり奴は動けない、でも奴は諦めなかった。


 両の手のロックを外し、腕に持つエアーモーターのドリル、ロングビットの着いたドリルで襲って来る、そして俺の胸の中心に12mm位のドリルのビットだろうか、衝撃インパクトドライバーの衝撃が伝わり始めた、此れで終りか…。


 ただ奴を逃がす訳にも行かない、俺の左手に握られたマイナスドライバーの穂先は俺が貫かれて居る所と同じ所に刺さって居る、右手で其のグリップを更に押し込んで行く、余り思い出したくは無い感触だ、俺にも感じたくは無かったが胸から硬い物に当たった時に発する音がしてる。


 <ダッ!、ダッ!、ダッ!、ダッ!>と連続音がして、其の度に打ち込まれて行く…。

 エアータンクの残量が尽きるまでは動き続ける筈だから。

「これで終わりか俺も…、でも刺し違えた奴ももう追えまい…。」


「御前本当に馬鹿だな…。」

 そんな声が聞こえて来る…。


「素直に死んで呉れれば良かったのに…。」

「フン!、そう簡単に無駄死にできるかよ…。」

「本当にバカだよ、何時まで経っても…。」

 何故か影が落ちて奴の顔は未だ見えない…。


「バカだよな御前、何で殺されて呉れないんだよ?」

「さっきも言ったろ、無駄死に出来るかって!」

「お互いもう時間は残って居ないから、教えてやるよ…。」

「何が目的でこんな事をした!」

「さっきの四人は何と言って離れて行ったんだ、思い出せよ!」

「さっきの四人だと?」

 想い出して居た、残された僅かの時間で…。



 一人目…、「ちゃんと待つんだよ、やり直せたら。」

 二人目…、「独りにしないでね、やり直せたら。」

 三人目…、「ちゃんと帰って来るんだよ、やり直せたら。」

 四人目…、「一緒に暮らそうね、やり直せたら。」

 そう言う事か、此れは…。


「本当にバカだよお前、素直に此の夢の中で死んでりゃ、俺がお前の拘りを全て消してやれたのによ馬鹿だよお前…、まあ覚悟する事だ俺は二人目だからよ、忘れた頃に又来るぜ、あばよ!」


 掻き消すように消えて行った、消える前の一瞬で理解した、俺の中に居るもう一人の俺か…。


 もう時間も無いのか、段々意識が遠く為って行く、素直に夢の中で殺されてりゃ此の先は苦しまなくて済んだのか、もう今と為ったら解らないが…。


 意識は其処で途切れた、記憶の奥底に沈んで行く、もう一人の俺の記憶と供に…。



 TVの音で目が覚める、前回は記録する事、記憶に留めて置く事も出来なかった、今回は起動した儘寝落ちして居た様だ、何時でも打てる状態のPCが目の前に在る、覚えて置ける内に記録する事にした、確か一度目はナイフがお互い刺さって居た、今度はドリルとドライバー、次は何を獲物で戦うんだろうな、其れとも抗わず素直に意識を葬って貰おうか、此の耐え難い哀しい思いが永遠に消えるなら…。

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