中村りんず

第1話

 そこには点があった。紛れもない黒点(注1)だが、人間の知覚では認知できないほど微細なものである。


注1:ここでの黒点は「黒い点」のことであって、太陽の表面にある低温の部分(注1・1)とは無関係である。


注1・1:低温とはいえ、太陽の表面にあるためかなり高温である。ここでは相対的(注1・1・1)な低温のことを示している。


注1・1・1:「他と比較して~」といった意味で使われる。使用語彙(注1・1・1・1)にできると少しだけオトナ(注1・1・1・2)になった感じがする。


注1・1・1・1:自身の中で発話したり文章にしたりできるボキャブラリーのことである。「理解語彙」と併せて憶えておくと吉(注1・1・1・1・1)。


注1・1・1・2:「正式に成熟した人間」という意味ではなく、「人間として若干カッコつけられる」程度の意味なので、かたかな(注1・1・1・2・1)表記になっている。


注1・1・1・2・1:片仮名のハナシ(注1・1・1・2・1・1)をしているので「カタカナ」と書いたほうがベターだろう。よって誤植。


注1・1・1・2・1・1:ここで「話」と表記していないことに意味はない。それらしさを演出しただけである。


注1・1・1・1・1:この文章に霊験はないため、実際に吉かどうかは不明。また、短編『ビヨンド・ディスクリプション』(注1・1・1・1・1・1)の主人公である士口吉吉(注1・1・1・1・1・2)とは無関係。


注1・1・1・1・1・1:人知を超えた想像力を文章で表現した力作。まだ上梓されていないため内容は不明。上梓されていないどころか、まだ一文字も書かれていない作品である。よって作品ですらない。


注1・1・1・1・1・2:どうやら『ビヨンド・ディスクリプション』の主人公は士口吉吉というらしい。正式な発音は不明だが、さしあたって(注1・1・1・1・1・1・2・1)「しぐちよしきち」と読んでおくことにする。


注1・1・1・1・1・2・1:使えるとオトナ(注1・1・1・2を参照)になれた気がする言葉の代表。主に社会人(注1・1・1・1・1・2・2・1)が用いる。


注1・1・1・1・1・2・2・1:非常に偉い存在。時間を無駄にしてはいけないとされている。よってこんな文章を読むべきではない。



※この物語はフィクション(注2)ですらありません



注2:「フリクション」(注2・1)とは無関係。


注2・1:フリクションボールペンの登場で親しみやすくなったかたかな(注1・1・1・2・1を参照)語。フリクションボールペンは書き損じた場合でも容易に消せるため便利な筆記具だが、公的な文章では用いないほうが吉(注1・1・1・1・1を参照)。




 士口吉吉は、黒点を凝視し、ボールペンの裏を使って消去した。

 それから吉吉は太陽を消し、地球をも消し去った。

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中村りんず @nakamura_rinzu

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