光対光、ヒト対ヒト
『
確かに敵性体は俺たち
だが、だからと言って戒厳令敷きっぱなしでいい訳もない。小惑星帯も、火星も、木星圏も、戒厳令がなければとっくに自治権を付与されてるはずだったのに、箸の上げ下げまで統一政府に指示される有様だ。
だから、俺たちは――小惑星帯人は、密かに統一政府の
全てはこの日、
※ ※ ※
「オライオン級なら
「一艦だけならイケるだろ。その間に本隊が、決める」
「そうだな。始めよう、コナタ」
俺は巡天機に発艦の指示を出す。操作盤に触って、
「行って来い俺らの巡天機――アガメムノン
巡天機を出した時点で向こうには気付かれるはずだ。オライオン級に追いつかれる前にアルゴノーツ艦に取り付ければ
「まあ、そこまで無能なヤツなら敵性体相手に完封とかしねえよなあ」
しかし、向こうはこっちの巡天機と堂艦については何の情報も知らないはずだ。
「先に仕掛けるぜ。カナ、
「了解」
アガメムノン級とトロージャン艦の間に延びた光の束が、より強く、太く輝く。その間に、俺はアガメムノン級を
「食らえ……
平行に並んだアガメムノン級8機から一気に空間波動を放つ。射程距離的にはオライオン級とアルゴノーツ艦を一気に捉えられるヤツなのだが、オライオン級9機が驚きの機動を見せた。
「嘘……あんなこと、オライオン級に出来るの?」
「知らねえよ!」
巡天機側から光流を操作する……カタログスペック的にはそんなことが出来るようには書いてないはずだ。それが出来るのは、政府軍のあの艦の指揮官が、余程丁寧に巡天機側のAIを教育してきたからだとしか言いようがない。
勿論、それは無茶な動きだ。そもそも光流そのものと空間波動ではエネルギー準位が違う。2~3機ほどは光流を負えなくなっている――機動不全状態になっている。
「Aチーム、
操作盤を
当然、あちらも二足二腕形態のまま、こちらを迎え討とうとする。先ほどの戦闘からすれば、恐らく得物は
「Aチーム、
それに優位を取れる長めの剣を持たせている。向こうは懐に飛び込みたいはずだが、その隙を与えないまま一撃で離脱するための強襲形態だ。何しろ、こちらは政府の巡天機とやり合うことを考え続けてきたのだ。
双方の光が舞う。Aチーム4機が、オライオン級とすれ違い様に長剣を振るう。間違いなく命中した、取った、と思った。
「違う! 光流を曳いてない……今斬ったのは機動不全の機体だ!」
カナが俺に注意を促す。
「急速離脱!」
思い切り
「Bチーム、牽制射撃!」
通底波砲を、弱めの出力で、やや空間斜角をバラけさせながら撃つ。あちらが砲撃形態に変形し辛いよう、空間を抑えるのだ。
「コナタ、アレをやろう」
その様子を見ながらカナが言った。
「いや、アレをやったら光流に回すエネルギーが残らなくなるぞ」
それは勿論、巡天機の運用が出来なくなることを意味する。そうなれば基本、堂艦は丸裸だ。
「もう本隊の作戦まで時間が無い! 私たちは本隊の迎撃に堂艦が少しでも回らないようにするための囮だ。こちらの脅威を見せて、他の堂艦を誘き寄せる必要がある!」
「それはまあ……そうか」
俺はともかくカナの命は惜しくはある。即興でこれだけの迎撃が出来る政府軍の指揮官にも興味は尽きない。でも、火星以遠独立運動の大義とどちらの方が重いんだ、と言われれば、俺にも返す言葉は無い。
「……やってくれ、カナ」
「堂艦、
堂艦の操作なので、カナが指揮を執る。アルゴノーツ級に限らず政府軍の堂艦には無い設計思想のはずだ。
巡天機の母艦でしか無いはずの堂艦自体が変形し、広域戦略兵器となる。それが数に劣る小惑星帯軍の手札だった。
「食らえ――
全方位に空間波動が広がり、敵味方の巡天機を巻き込み、全てを薙ぎ払う……はずだった。
波動の広がりが、俺たちと巡天機の間で止まっていた。
「――まさか」
事前に観測出来なかった暗黒領域が、空間波動を塞いでいる。その意味するところはただ一つ。
敵性体が、来たのだ。
『聞こえるか! 反乱兵!』
同時に政府軍の公共帯域を使って、通信が入った。恐らくアルゴノーツ艦だ。
『大型の敵性体だ! このままにしておけばお前たちの他の兵にも、地球圏の
恐らくそれは、敵指揮官の肉声で、向こうの本隊の意図を汲まない本音で。
「分かった。条件がある」
咄嗟に返事をしてしまった。
「コナタ!? そんな重要なことを本隊に謀らず――」
「向こうも多分そうだよ。俺はコナタ。コナタ・Tr0103。あんたの名前を教えろ」
『――ケイン。ケイン・スミスソン』
「今だけだぜ! マジで!」
そうして俺たちは互いの巡天機を、その大型で非人型の敵性体の方に向けたんだ。
オーロラ・オーケストラ 歩弥丸 @hmmr03
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