色狂いの兄と、とある村のはずれで二人暮らしの弟は、雪の積もった冬の夜に仕事を終えて帰ってきた。しかし、家は妙に静かで、胸騒ぎを覚えた弟が窓を覗くと……。淡々と、どうにもできない絶望と恐怖を描く伝奇もの。何もかもを諦めきったかのような主人公の語り口が印象的です。生まれる場所を選べないという、不条理さや苦しみを真正面から見据えつつ、その中にあるものもしっかり描き通します。だからこそ、残忍な物語なのに、読後は寂しいような気持ちになりました。
寒い雰囲気で始まるお話でした。ただ、その暗く静かな色合いだからこそ、とっても綺麗で素敵なお話でした。特に、"異形"の色描写が好きです。はじめはハラハラドキドキさせられて、読み進めて「あっ、そうだったのかぁ」となりました。ラストにも感じたのですけれど、描写のない余白なところに、想像をかきたてられました。そこが胸に沁みて、すっごく好きです。