最終話「冒険をしよう」
「今回集まってもらったのは、他でもない。君たちの卒業試験の免除についてだ」
『……え』
スターさんの発言に、その場に集められた全員――俺、ダーケさん、ラドルさん、ヒガさんの四人――は同時に声を漏らした。
「まず、学力試験に関してだが、君たちの成績は実に優秀であり、免除に値するというのが学校側の判断だ」
呆けている俺達をよそに、スターさんは続ける。
「次に実技試験に関しては、学校を襲撃した――ユレインを殺害した人物の撃退、チームを組んだ上での、集団戦評価Aランク相当のオーガ三体討伐という実績から見て、免除。なにか質問はあるかな」
スターさんはただ淡々と書類を読み上げるようにそれを俺達に伝えた。
「免除ということは……私たちの冒険者ランクはいくつになるんでしょうか?」
ヒガさんが声を上げた。確かに、本来卒業試験を突破した人の冒険者ランクはその時の点数によってE、D、Cのうちどれかに当てはめられる。免除なんて話を聞いたことはないので、未知数だ。
「Cだ」
「マジかよ……」
声が溢れた。まさかの普通に卒業試験を突破してもなるのが難しいCとは。
「よって、【クラン】の結成と、すでにある【クラン】への入団が許される」
【クラン】確か、冒険者の中で固定のパーティーを組む人たちの総称だ。【クラン】を結成、または入団すれば【クラン】のランクに応じて冒険者ギルドから恩恵が受けれられる。
「【クラン】に関してはまた考えると良い。他に質問は?」
「明日からは学校に来なくていい、ということでしょうか……?」
恐る恐る、ダーケさんが質問した。
「あぁ、今日からキミたちは正式な冒険者だ。ギルドカードも渡しておこう」
言って、スターさんは人数分のギルドカードを手渡してくれる。ギルドカード。冒険者である証。予想外の形ではあるものの、ついに手に入れることができた。
「これは始まりだ。ここから、キミたちの武勇は始まる。冒険者として、これまでの実績など無いに等しいキミたちが、いかなる物語を紡ぐのか期待している」
それは冒険者の先輩としての激励の言葉だった。
「他には?」
一同、黙り込む。質問はもうないことの意思表示。
「――ないようだな。では、武運を祈る」
『ありがとうございます!』
俺達は揃ってお辞儀をすると、部屋を後にした。
「さて、これからどーすっかね」
部屋を後にしてから、ラドルさんが口を開いた。
「どうするも何も、決まっているでしょ?」
言って、ヒガさんがこちらをちらりと見る。
「そうだな、俺達はもう冒険者なんだ。冒険をしよう」
ハズレの才能を引きましたが、仲間たちのお陰でなんとかやれています。 桜城カズマ @sakurakaz
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