第三十六話 応仁の乱の真相
代を重ねるごとに、こう考えるようになっていた。
「わしは『将軍』ぞ?
室町幕府の頂点に君臨し、武家の
それが、なぜ
何とか奴らの力を
こんな身勝手な考えが……
京の都の武器商人たちに、まんまと付け入る隙を与えたのだ!
◇
そもそも。
室町幕府というものは、
京の都の武器商人たちと手を組み、有力大名の力を
心ある幕府の家臣たちは、こう嘆いていたらしい。
「京の都の武器商人どものような薄汚い
己の手足を切り取って、どうやって立っていけるというのか!」
と。
◇
さて。
「光秀様が
あまりにも薄汚いやり方でしょうな」
「……」
「有力大名の力を
ただし!
ある強烈な『副作用』を生み出してしまったのです」
家康が反応した。
「四郎次郎殿。
副作用とは、一体……?」
「『
家康殿」
四郎次郎より早く、光秀が答える。
「
地位の低い者が……
地位の高い者を引き
「うむ。
有力大名が
『我が主は……
国を一つにできない弱く愚かな支配者であることに加え、権力や富をいかに
わしは、こんなどうしようもない主に付き従うべきなのだろうか?』
と」
「有力大名が、付き従っていたはずの家臣によって大名の座から引き
まさに
四郎次郎が話を続ける。
「
これに強い危機感を抱いたのが、三番手の
「四郎次郎殿。
それはもしや……
『
光秀の問いに、まず家康が反応した。
「応仁の乱ですと!?」
「家康殿。
我らは、こう教わって育ってきた。
『この戦国乱世は……
およそ100年前に起こった応仁の乱によって始まった』
と」
「光秀殿。
それがしも、そう教わっています」
「だが!
なぜ応仁の乱が起こったのか、納得のいく説明を受けたことがあるか?」
「ありませんな。
そういう『現象』の話だけです」
「それがしは……
四郎次郎殿の話を聞いて、『
「応仁の乱の真相ですと!?
是非とも教えてくだされ!」
◇
このような『現象』しか書かれていない。
「乱は11年も長く続き、戦場となった京の都は焼け野原と化した」
と。
残念なことに。
どの歴史書も『原因』についてはお粗末だったり見当違いで、全然ピンと来ない。
これは仕方のないことだろう。
◇
家康に促され、光秀が始めた話を要約すると以下の通りとなる。
畠山家自身が後継者を定めたにも関わらず、京の都の商人たちに
こうして
当初は
「京の都の武器商人どもを敵に回すと厄介じゃ」
こういう気持ちが、
ところが!
武器商人たちが
ときの将軍・
「京の都の武器商人どもの汚いやり方には、もう我慢ならん!
幸いなことに。
将軍である
ならば、今こそ立ち上がるときぞ!
畠山家自身が後継者と定めた
こうして。
『京の都』のやり方に反発する者たちが、『堺』に集結した。
◇
四郎次郎によって、衝撃の真相が明かされる。
「堺の地に大軍が集結しつつあることを知った京の都の武器商人たちは……
自らを守るため、自らと手を組む者たちを京の都に集結させました。
総大将を務めた
その数は11万人。
一方。
京の都の武器商人の薄汚いやり方に反発する人々は、堺の地に兵糧や武器弾薬を集める拠点の建設を始めました」
「何と!
「堺に集結した人々は……
その数は16万人。
こうして京の都と手を組む西軍11万人と、堺と手を組む東軍16万人が、11年も続く泥沼の
「それが……
あの応仁の乱の真相なのですか」
「光秀様。
そして家康様。
御二方は、乱の『結末』をご存知でしょう?」
家康が答えた。
「無論、存じている。
西軍の総大将である
西軍の主力を務めた
「その通りです」
「四郎次郎殿!
西軍が消滅したということは……
応仁の乱で、京の都は裏から日ノ本を支配する地位を失ったことになると?」
「そうなりますな」
◇
同じ頃。
「皆々様は……
いつまで現実から目を背けるのです?
およそ100年前に起こった
こう言い放った若者に対し、西村屋は冷静に切り返す。
「吉田屋の
おぬしの申す通りじゃ。
乱の敗戦で、京の都は裏から日ノ本を支配する地位を失った。
堺に奪われてしまった」
「……」
「しかし!
奪われたら、奪い返すまでのことよ。
そのためにも……
東の武田家と西の毛利家を、堺の武器商人どもと手を組む織田信長の『敵』とせねばならん」
「具体的にどうされる?
英雄である
同じく英雄である信玄公が健在の武田家が、武器商人ごときの望み通りに動くとも思えないが」
若者の反論を無視し、西村屋は一同を見た。
「皆々様。
実は……
東の武田家を動かす鍵となる『男』を、ここに連れてきている。
通してもよろしいか?」
一同が無言で
西村屋は、一人の男を連れて来た。
その男を見た一同は、思わず
筆頭格の立花屋が思わず声を上げた。
「西村屋殿!
なぜ……
この場に、あの商売敵である堺の武器商人を連れてきたのか!」
と。
西村屋は、一体何をしようとしているのだろうか。
【次話予告 第三十七話 織田信長、京の都に火を放つ】
吉田屋の了以は、思わずこう叫びます。
「それだけは止めよ!
織田信長は必ず、京の都に火を放つぞ!」
と。
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