番外編
銀笛
久しぶりに公園でフルートを吹いた
部活を引退して2ヶ月
楽器を組み立てる手も少し震える
2ヶ月しか経っていないはずなのに
とても懐かしく感じた
リッププレートに唇をあて
頭部管に息を吹き込む
そのとき、少し掠れた音がなった
繰り返し吹き込んで、2ヶ月前の感覚を思い出す
いつの間にか、当時の感覚が戻ってきて
ソロコンで吹いた曲をなんとなく吹いてみた
いつも吹く時は癖で目を閉じてしまう
なんとなく音に集中できる気がして
今日も目を閉じて吹いていた
以前よりも音は劣っていた
けれど楽譜に囚われず
自分の思うがままに吹いた
周りが歩く音も、周りが話す声も気にならないほど
私は夢中になっていた
曲を吹き終えて目を開けた
気がつくと歩いていた人が足を止めていた
その人は私に向かって拍手をくれた
私は軽く会釈をし、再び吹き始めた
その頬は真っ赤だったと思う
吹き始めてから数分が経った
満足するまで吹けた気がして
私は楽器を片付け、足早にそこを去ろうとした
そのとき、こちらに向かって早歩きで来てくれる女性と目が合った
「素敵な音色をありがとう。」
その人はそう、私に告げた
誰かに聞いてもらうつもりはなかったけれど
誰かに聞いてもらえたこと
お世辞でも褒めてもらえたこと
とても嬉しかった
誰かに聞いてもらえること
誰かに認めてもらえること
その喜びを
改めて感じられた
またいつか
フルートが吹けますように
日記 藍崎乃那華 @Nonaka_1212
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